研究課題/領域番号 |
18H01434
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
梅比良 正弘 南山大学, 理工学部, 教授 (00436239)
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研究分担者 |
王 瀟岩 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 准教授 (10725667)
武田 茂樹 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (50323209)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 多次元信号処理 / ACI(隣接チャネル間干渉) / ACLP(隣接チャネル漏洩電力) / PAPR / 線形化 / ガードバンド |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、課題①:ピーク対平均電力比(PAPR)、隣接チャネル漏洩電力(ACLP)の小さな信号方式、課題②:移動端末の隣接チャネル漏洩電力(ACI)を低減するHPA線形化システム、課題③:実証実験の3課題を設定して研究を進めた。 課題①では、提案のOW-QAM-DFTs-OFDM方式は、サブチャネル間隔が異なる、または非同期送信の場合、サブキャリア間の直交性が失われ、ACIを低減するチャネルフィルタが必要となる。本年度は、オーバーラップFFTフィルタバンクを受信フィルタに用いる場合の伝送特性を評価し、周波数特性、FFTサイズ等の設計パラメータに応じたEVM(Error Vector Magnitude)、ACI、総合伝送特性を比較評価し、準最適な受信フィルタ系を明らかにした。 課題②では、昨年度提案の、HPA入出力特性をルックアップテーブルに格納し、動作点推定パイロットを用いて動作点制御を行うディジタルプリディストーションHPAリニアライザの詳細検討を行った。TDD方式を対象に、空きタイムスロットを用いて携帯端末よりパイロット信号を自局宛てに送信し、IM3(3次混変調歪)を測定してIM3を小さくするよう動作点を制御する。計算機シミュレーションにより提案方式の設計パラメータとACLP低減効果、収束特性を明らかにした。また、IM3測定が容易なバブコック配列を用いた動作点推定用マルチキャリアパイロット信号を提案し、その設計法を明らかにした。さらに、AM/AM特性のみのHPAモデルに加えて、AM/AM、AM/PM特性を持つHPAモデルを用いて特性評価を行い、同等のACLP低減効果が得られることを確認した。 課題③については、コロナ禍の影響で、実験装置を用いた特性評価実験を行う時間が制限されたため、実験系の基本特性を評価するに留まった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題①については、OW-QAM-DFTs-OFDM方式のACI/ACLP特性、受信フィルタ系のACI/EVM特性が明らかになり、Offset QAMを用いた、OW-OQAM-DFTs-OFDM方式の信号処理方式、ACI/ACLP特性も明らかにすることができた。当初予定した検討課題の検討は順調に進捗しており、π/4シフトQAMを用いるOW-QAM-DFTs-OFDM方式の評価のみが残された課題である。 課題②では、提案した動作点推定パイロットを用いてディジタルプリディストーションHPAリニアライザの動作点制御を行うHPA線形化方式の詳細検討を行い、その構成法を明らかにすると共に、計算機シミュレーションにより提案方式の設計パラメータとACLP低減効果、収束特性を明らかにした。また、バブコック配列に基づく動作点推定用マルチキャリアパイロット信号を提案し、パイロット信号の設計法を明らかにした。これより、課題②は順調に進捗している。 課題③については、コロナ禍の影響で、実験装置を用いた特性評価実験を行う時間が制限されたため、実験系の基本特性を評価するに留まった。実験による評価は予定より遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究はPAPR/ACLP/ACI低減、大電力増幅器の電力利用効率向上、ガードバンド削減の複合問題をシステムとして解決に取り組むもので、課題(1) 低PAPR・ACLP信号方式、課題(2) 非線形歪等化システム、課題(3)実証実験の3課題を設定して研究を行う。 課題(1)では、時間領域での重み付け加算処理を用いるOW-QAM-DFTs-OFDM方式の準最適な受信フィルタ系が明らかにした。また、Offset QAMを用いるDFTs-OFDMは、演算量増加やサブキャリア数増加の欠点があることが分かり、低PAPR・ACLP信号方式についてはほぼ終了したと考える。残された課題として、π/4シフトQAM を用いたOW-DFTs-OFDM方式の検討を行い、PAPR・ACLP改善効果を明らかにする。 課題(2)では、AM/AM特性とAM/PM特性の双方を持つHPAモデルにおける提案方式のACLP低減効果を詳細に評価する。特に動作点推定用マルチキャリアパイロット信号については、チャネル帯域幅に応じたマルチキャリアパイロット信号の設計法、受信機におけるAD変換器のビット数とIM3検出特性の関係等を評価し、提案方式の設計手法を確立する。また、提案方式による周波数利用効率改善効果についての評価を行う。 課題(3)は、課題(1)で提案する低PAPR・ACLP信号方式と、課題(2)で提案するHPA線形化システムのACLP/ACI低減効果、電力利用効率・周波数利用効率改善効果を実験により実証する。令和3年度はシグナルアナライザ、ソフトウェア無線機を用いた実験系を構築し、提案方式の基本特性を評価する。
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