研究課題/領域番号 |
18H01452
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
石丸 伊知郎 香川大学, 創造工学部, 教授 (70325322)
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研究分担者 |
和田 健司 香川大学, 医学部, 教授 (10243049)
西山 成 香川大学, 医学部, 教授 (10325334)
田中 直孝 香川大学, 農学部, 准教授 (60324109)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 赤外分光法 / 超音波定在波 / 空間的位相シフト干渉法 / フーリエ分光法 / 非侵襲血糖値センサー / パラメトリック効果 / マルチスリット / グルコース |
研究実績の概要 |
(Ⅰ) 超音波定在波による試料内部の反射面創成 試料内部に発生させた超音波定在波により任意の深さに屈折率差(=反射面)を発生させて光を反射させる可変光路長の反射面創生方法において、高効率な内部反射光検出のための適切な窓材形状を考案した。反射光は、ノイズとなる窓材表裏面と皮膚表面、計測対象であるソースとなる内部創成反射面からの反射光に分類することができる。反射率は屈折率差に応じて決定され、その差が大きいほど反射率が大きくなる。そのため、ノイズである窓材表面反射光(大気と硝材境界面)がソースである内部創成反射面(皮膚内部の境界面)からの光量の数百倍になってしまう。そこで、光学シミュレーションにより入射角度と窓材表面形状を最適化することにより問題解決できることを明らかにした。現在、窓材を試作中であり感度向上実証を行う予定で有る。また、ラットを用いた動物実験により、超音波オンによるグルコース固有の吸収ピーク(@9.25マイクロメートル、9.65マイクロメートル)顕在化効果を実証することができた。 (Ⅱ)豆粒大中赤外分光イメージングユニットの試作 皮膚を挟んで超音波アシストユニットを設置する観点からも、耳たぶに装着できる豆粒大の中赤外分光イメージングユニットが必要となる。独自のワンショット分光イメージングは、准共通光路の波面分割型の空間的位相シフト干渉法であるり、くさびガラス(傾斜角:1deg.程度)と平面ガラスにより平行光束の波面を2 分割して空間的に光路長差を与える。しかし、空間的位相シフト干渉法では、光束を面内で拡げた状態で空間的な干渉縞としてインターフェログラムを取得することから感度が低いことが問題であった。そこで、マルチスリット視野絞り法を新たに考案することにより2桁の感度向上を達成できる見込みを得た。現在、試作したユニットにより感度向上効果を検証中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
非侵襲血糖値センサーを実現するには、皮膚内部からの微弱反射光を高感度に検出することが大きな課題であった。そこで、本年度は2つの新たな光学手法を考案するに至った。一つは、皮膚と大気の境界面である皮膚表層からの反射光量が、皮膚内部からの販社よりも3桁高い現象であった。従来は、偏光特性を用いてブリュースターアングルからP偏光で照射することにより表面反射率を抑える手法が用いられている。しかし、中赤外光は元来微弱である事から偏光子を透過させる事による光源光量の減少が大きな問題であった。新たに考案した手法は偏光子を用いること無く、つまり光源光量を減少させること無く照明が可能になった。また、空間的位相シフト干渉法は、高い時間分解能を有しているので動きのある生体への適用に適している。しかし、光束を拡げたままで空間的な干渉縞としてインターフェログラムを取得することから2桁程度感度が低いことが問題となっていた。単純に視野絞りを拡げただけでは、干渉鮮明度が劣化してしまい分光特性の取得ができない。そこで、空間的な干渉縞の周期とマルチスリットの開口間隔を適切に併せることにより感度向上と鮮明度向上を両立させる手法を新たに考案した。これらの2つの手法は、血糖値センサーのみならず、光による生体モニタリングに広く適用展開可能となる汎用的な技術である。現在、論文投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
マルチスリット視野絞りを搭載した豆粒大のワンショット中赤外分光イメージング装置を構築した。また、新たな高感度窓材の形状設計を終えている。今後は、これらを組み合わせた光学装置を用いて、ラットの動物実験により血糖値計測精度の検証実験を行う。我々独自の中赤外2次元フーリエ分光ユニットを用いた超音波アシスト法の効果は実証済みである。また、超音波パラメトリック定在波の周波数や印加電圧による特性も実験により検証済みである。最終年度である2020年度は、これらの研究成果を結集して非侵襲血糖値センサーの実現可能性を実証する予定である。
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