研究課題/領域番号 |
18H01454
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
川西 哲也 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40359063)
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研究分担者 |
菅野 敦史 国立研究開発法人情報通信研究機構, ネットワークシステム研究所ネットワーク基盤研究室, 主任研究員 (20400707)
山本 直克 国立研究開発法人情報通信研究機構, ネットワークシステム研究所ネットワーク基盤研究室, 室長 (60328523)
稲垣 惠三 国立研究開発法人情報通信研究機構, ネットワークシステム研究所ネットワーク基盤研究室, 主任研究員 (60395085)
坂本 高秀 首都大学東京, システムデザイン学部, 准教授 (70392727)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | マイクロ波 / 周波数 / 高速測定 / 光変調 |
研究実績の概要 |
近年、GHzを超える帯域幅を占有する超広帯域無線システムの研究開発が進んでいる。一方で、様々な用途での電波の利用は拡大し続けており、電波資源の有効利用や周波数共用が重要となり、非常に広い周波数帯域における動的な周波数測定が必要となってきている。スペクトラムアナライザなどの従来の計測器では測定に時間がかかり、レーダなどで利用が広がる周波数が高速に変化する信号などに対応することが困難であった。そこで、本研究では光変調技術を用いた高速周波数測定技術の実現を目指す。変調により生じる側波帯の比から高周波(Radio Frequency: RF)信号の周波数を直読するもので、光源や被測定信号の強度変動の影響を受けずに測定が可能である。また、並列化することで、測定精度の向上や、周波数の直接的なデジタイズなども実現できる。 昨年度に引き続き、測定精度と速度の向上に関する研究を行った。測定装置の校正、評価には広帯域高速掃引光信号の生成がきわめて重要である。広帯域の周波数掃引を高速で行うと、増幅器や変調器などの各部品がもつ周波数特性を補償することが困難となるが、高速動作可能な可変減衰器を備えた光アンプを用いてその出力を光信号の段階で一定に保つ方法を開発した。光アンプは信号周波数が変動しても増幅性能が変化しないため広帯域でのレベル安定化が可能となった。検出高速化に関しては検出精度と速度の最適化のための受信装置の基本構成の検討を行った。特に単側波帯変調器(SSB)変調器の動作点安定化についての研究を進めた。光スペクトルから高周波信号の位相差が数度以下で求めることが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画記載の通り、光単側波帯(Single Sideband: SSB)変調器による瞬時周波数測定(Instantaneous Frequency Measurement:IFM)に関する研究開発を実施した。 測定精度・速度を評価するためには光信号および高周波信号としての広帯域周波数掃引信号を発生させる必要がある。各部品の周波数特性の影響を抑える必要があるが、高速広帯域掃引においては従来技術で対応することが困難である。例えば、既存の基準信号発生器ではマイクロ秒オーダーの掃引は不可能であった。高速掃引に適した任意波形発生装置と高次の周波数逓倍、搬送波抑圧光変調を用いることで広帯域周波数掃引が可能であることをこれまでに示していたが、周波数特性の補償が困難であった。今年度は高速応答可能な光可変減衰器を備えた光アンプで出力光レベルを一定と保つことで、周波数特性の影響を受けない信号発生を実証した。 また、信号検出側ではSSB変調器の動作条件(バイアス)の高精度制御が重要であるが、光変調器の動作を非線形方程式で推定する方式を提案し、光スペクトルと高周波信号位相差の関係を数度以下で確定することに成功した。高速信号検出を実現するための光受信器の構成も検討した。 これらの成果により、最終年度、瞬時周波数測定を実現するための要素技術確立が可能となることを見込んでおり、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
測定誤差低減と測定速度向上を実現するために、変調器や光フィルタなど各部の効率的な校正方法について検討する。特に高周波信号位相差と光スペクトル、変調器の動作状態の高速評価方法を確立し、また、高速掃引信号に対応可能な光検出器、時間変動信号測定器の構成の最適化を行う。 また、複数台並べることによる周波数の直接的なデジタル変換や、光出力として得られることを活用した光ネットワーク特性評価方法について研究を行い、精度向上と測定範囲の拡大を目指す。また、応用技術として、光信号のスペクトラムや周波数の高速・高精度制御についても原理の検討を行う。
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