研究課題/領域番号 |
18H01457
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
木下 基 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (00415671)
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研究分担者 |
東島 侑矢 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究員 (20805147)
飯田 仁志 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究グループ長 (40392584)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | セシウム / ラビ周波数 / リュードベリ状態 / マイクロ波 / ミリ波 / テラヘルツ波 / レーザー / 二重共鳴分光 |
研究実績の概要 |
セシウム原子の基底状態の超微細構造間遷移およびD2線による二重共鳴を利用することで、セシウム原子に照射したマイクロ波を近赤外の蛍光へ変換する「電磁波の可視化」に関する研究を実施した。昨年度までに実証された一次元強度分布の可視化をさらに推進し、今年度は平面回路上のマイクロ波を二次元的に可視化した。平面回路上としては、まず最も単純なマイクロストリップラインを選び、理論計算結果との比較から、妥当性を確認した。その後パッチアンテナから放射されるマイクロ波の可視化にも成功した。さらに、ホーンアンテナから放射される空間中のマイクロ波についても可視化を実施した。次に、セシウム原子が持つスピンによる偏波選択性を利用して、マイクロ波を偏波方向別に分離してイメージングすることにも成功した。本成果は、新たなマイクロ波計測技術として、マイクロ波回路の設計・製造、または新たな探査・検査システムの開発等に貢献することが期待される。 原子によるミリ波・テラヘルツ波計測の基礎技術開発として、光音響効果を利用したテラヘルツ波減衰量の校正方法を新たに開発した。本技術は従来のマイクロ波減衰量校正にも用いられる1 kHzの低周波減衰量と同時比較することが可能である。ミリ波・テラヘルツ波に関する計測技術は開発途上にあり、本技術のような基本技術の整備は重要である。本技術はセシウム原子を用いたミリ波・テラヘルツ波測定を遂行する上でも信号検出の線形性を検証する要素技術として期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マイクロ波の可視化技術の開発については大きく進展している。可視化の実証をはじめ、リアルタイム動画の撮影、二次元イメージング、偏波分離、平面アンテナ、ホーンアンテナなどについての可視化に成功している。これらの成果を基に学会発表、論文発表、特許出願などを行っている。 ミリ波・テラヘルツ波計測については、昨年までにスペクトラム・アナライザの開発を行う他、今年度光音響効果を利用した線形性・減衰量校正技術に関する研究を行った。本成果を基に学会および論文発表を行っている。本成果は当初の予定以上の成果である。他にもリュードベリ原子生成のための光源準備を進めている。 ラビ周波数を利用した電磁波強度の精密測定については、ゼーマン効果による周波数任意化に成功している。さらに現在、導波管系および回路基板系の両面においてラビ周波数測定実験を推進している。 以上、テーマごとに進捗差はあるが、概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
電磁波の可視化に関しては、いままでにリアルタイム、高分解能、偏波分離イメージングなどに成功するなど、順調に進んでいる。今後は、アンテナや共振器などを利用した周囲環境に敏感な可視化イメージングを基にした新機能センサーの開発、マイクロ波カメラやそれを利用したイメージングシステムの開発、さらにラビ周波数測定と組み合わせた絶対強度イメージングなどを予定している。 ミリ波・テラヘルツ波計測については、基礎的な計測技術の開発を推進するとともにリュードベリ原子生成のための制御系の開発を進める。 絶対強度測定については、導波管内の精密パワー測定を推進するとともに、変調されたポンプレーザーを導入したポンプ・プローブ法による局所的な絶対強度測定に関する研究を進める。本研究は基礎理論構築から立ち上げるためオリジナリティの高い成果が期待できる。
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