研究課題
本年度は三次元空間中に波長程度の断面積を持つ曲線状の音響ビームの生成について、超音波二次元フェーズドアレーによる幾何学的な波面合成原理を導出し、結果として音響インテンシティベクトルがビームの各箇所における接線と平行であるような音場の生成を達成した。これは空気の加速方向がその箇所のビームの接線方向を向くような媒質加速度場の生成を意味し、これが達成されていること数値シミュレーション及び実環境実験を確認した。ビームの形状はパラメトリックに決定され、ビーム内の各線素と二次元フェーズドアレーの列とを対応付けることでビームを生成した。このビームの生成法はビーム形状を与える連続関数の弧長の数値積分のみを計算すればよいため、計算量的なコストが小さく、数値的に安定である点に特徴がある。曲線状に伝播する音響ビームの生成は曲線状の流線を持つ流れの生成を意図したものであったが、これについては完全に狙い通りには達成されなかった。流れの形状がビームに沿い、かつ流れの各箇所がおおむねビームの接線方向を向いていることは確認されたが、これはビームの一部分においては流線を形成していたもののビーム全体にわたって連続的な流線となっていることは確認できなかった。したがって、当初の目的としての長距離にわたる自由な軌道上の物質輸送に関してもやはり部分的に達成されたという状況である。なお、これらの研究成果は応用物理分野の国際誌の原著論文として採録された。
2: おおむね順調に進展している
上述のように、自由空間における空中物質輸送に対して一定の成果を達成し、これが原著論文として発表されていることから初年度の進捗としては順当なものであると考える。現状においてはおおむね研究計画に沿った形での進展がなされており、今年度の研究における実験結果は来年度以降の研究の発展のためのヒントが多く得られるものであったことからおおむね順調であると判断する。
幾何学的な波面合成による流れの生成は、加速度場と速度場を同一していることから、これが有効である状況は単独直線状ビームなどかなり限定的なものに限られることがわかった。よって、来年度以降は流体力学的な媒質の運動を直接最適化する方略による、いわば流体力学的波面合成を研究における主要な方針とする。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Journal of Applied Physics
巻: 125 ページ: 054902~054902
10.1063/1.5052423