研究課題/領域番号 |
18H01466
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小川 智之 東北大学, 工学研究科, 准教授 (50372305)
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研究分担者 |
マクナミー キャシー 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (40504551)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 磁性ナノ粒子 / 複合材料 / 磁気損失 / 電磁波吸収 |
研究実績の概要 |
非接触給電システムにおける電磁波漏洩の抑制や電気電子機器・デバイス間の電磁波干渉による誤動作の防止を念頭として、kHz帯域からGHz帯域までの超広帯域電磁波吸収を実現する鉄基スピンナノクラスターハイブリッド材料の創製と磁気損失発現機構の解明を目指す。 今年度、ハイブリッド材料実現のために必要となる純鉄、および、酸化鉄ナノ粒子について、共凝集法を適用する前段階に相当するナノ粒子分散溶液における粒子の分散限界濃度を詳細に調べた。 熱分解法で得られた純鉄ナノ粒子の平均粒径は電子顕微鏡像から12.5nm程度であった。また、熱分解法で得られた酸化鉄ナノ粒子の平均粒径は3.4nmであった。一定量の純鉄ナノ粒子、あるいは、酸化鉄ナノ粒子を特定の一定量の非水系溶媒中に超音波で分散させ、凝集・沈殿の有無を確認した。その結果、純鉄ナノ粒子の場合、分散限界濃度は溶媒1ml当たり2.0mg~2.3mgであることが分かった。また、酸化鉄ナノ粒子の場合、今回調べた範囲内ですべて分散することが分かり、分散限界濃度は少なくとも1ml当たり450mgであることが分かった。これは、酸化鉄ナノ粒子の粒径が非常に小さく、粒子表面に吸着している界面活性剤による分散力の向上によるものと考えている。一方、純鉄および酸化鉄ナノ粒子の総重量を20mg一定とし、2種類のナノ粒子の混合比率を系統的に変化させた際の溶媒への分散限界濃度を調べた。その結果、分散限界濃度は1ml当たり2.29mgとなり、これは純鉄ナノ粒子の分散限界濃度と同程度であることが分かり、混合粉末の溶媒中への分散は純鉄ナノ粒子と相関があることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに純鉄、ならびに、酸化鉄ナノ粒子の粒径制御技術、および、それら粒子の溶媒中への分散技術の構築を行い、共凝集体の作製に必須となる粒子の分散限界濃度などの知見を得ることができた。また、窒化鉄の高い磁気異方性を用いたGHz帯域における磁気共鳴現象を捉え、超高周波帯域における電磁波吸収の発現に向けて着実に進展している。これらの知見の蓄積を基盤技術として、最終年度、共凝集体や粒子配列体の作製、ならびに、低周波帯域から高周波帯域までの磁気損失発現機構の解明につなげる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である次年度では、異種粒子の混合比率を系統的に変化させた共凝集体の作製技術とその構造評価技術を構築し、均一に混合したハイブリッド材料の実現を試みる。また、研究の進展に合わせて、粉末を塗料化・シート化した試料作製技術にも着手する。これらの材料の静的・動的磁気特性評価を通して、ハイブリッド材料における磁気損失の起源を探り、高性能の電磁波吸収材料指針を見出す。
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