研究課題/領域番号 |
18H01467
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
丹羽 正昭 東北大学, 国際集積エレクトロニクス研究開発センター, 教授 (90608936)
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研究分担者 |
内山 潔 鶴岡工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (80403327)
蓮沼 隆 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (90372341)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | イオン伝導 / 電子伝導 / 電解質膜中の電気伝導 / 極薄電解質膜 |
研究実績の概要 |
1)イオン伝導性の振舞いの確認(極薄YSZ膜の高温インピーダンス測定): ZrO2における酸素の不定比性とイオン伝導率の関係を明らかにするため、ZrO2が薄膜化により固体電解質に適した高対称相が安定化する点に着目し、極薄膜YSZ膜でのイオン伝導性評価の可能性を検討した。原子平滑面を有し電極としても機能するNb:SrTiO3基板上にYSZ(Y2O3 5.3mol%)をスパッタにより6~15 nm堆積後、窒素雰囲気中500度30secの熱処理によりYSZ膜を結晶化させた。室温では電子の応答に対応する典型的なRC並列回路の特性が得られる一方、温度上昇によりイオン伝導の寄与と推測されるkinkが現れた.これらのインピーダンス特性は膜厚にほぼ依存しなかったことから、6nm程度の薄膜化においても伝導機構は主にバルク特性により描像されることを示唆する。またkinkに対応するインピーダンスの温度依存性から見積もられる活性化エネルギーはYSZグレイン内のイオン伝導抵抗に対応するものと推測され、厚膜における値ともよく一致した。この結果から極薄膜の評価により酸素の不定比性とイオン伝導性の理解に向けた応用が期待できる。以上の知見は、極薄YSZ膜の評価には従来のPt下地電極では不適であることが判明して初めてなしえたことである。本実験結果については応用物理学会春季講演会で報告した。 2)固体燃料電池用電解質膜のイオン輸送糧に関する科研費活動の喧伝: 英国Science Impact社の科学雑誌の取材を受け、活動記事が掲載された。 3)酸素含有量依存性の検討: YSZ膜中の酸素欠損量の制御としてYSZ膜成膜後の熱処理雰囲気を変えた場合のインピーダンスを行うべく、真空、酸素雰囲気、水素雰囲気における熱処理を施した成膜を行った。(測定は次年度実施予定)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の活動で注力せざるを得なかった予想外のこととして、YSZ極薄膜評価用の試料作成に関連した電極部の問題があげられる。YSZ電解質膜中の伝導機構として酸素イオン伝導から電子伝導に遷移する膜厚極めて薄いと考えられ、当初予定していた電極材料、構造の見直しを迫られた。具体的には、Ptはミクロには表面ラフネスが大きいため下地電極として極薄のYSZ膜評価には適さない事が判明した。この対策として以下の3点を検討した。 1)電極として用いられる程度の低抵抗のSi(100)基板を電極として用いる試み。2)原子ステップが形成されるNb添加のSrTiO3単結晶基板を用いる試み。3)ウェット処理により比較的表面が平坦になるSi(111)基板を電極として用いる試み。 これら3項目を計画外で検討することを余儀なくされ、結果的に高価ではあるものの再現性良く特性が得られた低抵抗SrTiO3基板を用いることにした。この知見は、大きい収穫であったが、結果が得られるまでにかなり遠回りしたため、当初予定のYSZ膜中の酸素濃度異存実験の測定までこぎつけなかったことが悔やまれる。 加えて、R2年4月から転任(東北大学→東京大学)のため、設備移設など年度末に実験する時間が確保できなかったことも反省すべき点であった。
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今後の研究の推進方策 |
東京大学への転任に伴い、実験場所が変わる。特に、YSZ薄膜評価試料の作成体制が大きく変わることになる。(今まで、作成していた環境は東北大学に職員に限定されるため)この不連続性に対処するために新たに分担研究者として加わっていただく西村博士にご協力願い、試料作成、測定系の整備を迅速に進め、結果として転任以前より研究の加速が実現されるように努めたい。
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