研究課題
超放射と利得スイッチのクロスオーバー効果を特徴付ける電子系の量子力学的コヒーレンスの発現を定量的に評価するために、高密度キャリアが反転分布を形成した状態における位相緩和時間を計測した。2台のレーザーを同期することで、試料の高密度光励起と四光波混合測定を同時に実現した。すなわち、励起用プレパルスの発生に用いる5psパルス幅のゲインスイッチレーザーと、四光波混合測定のk1およびk2パルスの発生に用いる300fsパルス幅のチタンサファイアレーザーを電気的に同期した。同期されたパルス間のタイミングジッターを7.6psと評価した。測定用試料として、不純物や欠陥など外因的効果を抑えた、均一性の高いクリーンで高品質のGaAs量子井戸をMBE法により作製し、発光および吸収スペクトルを測定して試料品質を評価した。以上の測定系と試料を用いて、四光波混合測定を行い、反転分布が形成された半導体での位相緩和時間を直接計測し、半導体レーザー動作時にコヒーレント現象が重要になる時間スケールを実験的かつ定量的に測定した。弱励起条件から徐々にキャリア密度を上げてゆくと、位相緩和時間は数psから、時間分解能0.17ps以下にまで減少したが、反転分布領域に達すると最長で0.34psまで伸長した。この実験結果について、半導体ブロッホ方程式理論にもとづいて散乱項を計算し、実験で得られた位相緩和時間の励起密度および試料温度依存性と比較し、位相緩和におけるキャリア間のクーロン相互作用や位相空間充填の寄与の評価を進めた。
2: おおむね順調に進展している
半導体ブロッホ方程式理論にもとづいて散乱項を計算し、実験で得られた位相緩和時間の励起密度および試料温度依存性と比較し、位相緩和におけるキャリア間のクーロン相互作用や位相空間充填の寄与を評価しているが、最終結論には至っていない。物理的機構を最終的に明らかにするため解析と検討を深めて、結論を明確化し、論文投稿を目指す。
同期されたパルス間のタイミングジッター7.6psは、同期エレクトロニクスの性能にリミットされている。中国・華東師範大学のグループの協力により、オリジナルのエレクトロニクス開発を行えば、そのジッターを低減できる可能性があることがわかった。その開発を含めて、当初計画を遂行する。
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