研究課題/領域番号 |
18H01469
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
秋山 英文 東京大学, 物性研究所, 教授 (40251491)
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研究分担者 |
挾間 優治 東京大学, 物性研究所, 助教 (80759150)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 半導体レーザー / 利得スイッチ / 超放射 / 光物性 / 非線形性 |
研究実績の概要 |
利得スイッチング実験の試料としては、これまで、GaAs多重量子井戸試料を用いてきたが、測定用試料として、InGaAs多重量子井戸試料を新たに設計し、MBE法およびMOCVD法をもちいて作製した。発光スペクトルおよび強度の低温から常温までの温度依存性を測定して、高品質試料が得られていることを検証した。並行して、ハロゲン化鉛ペロブスカイト材料やInGaN材料も準備し、光励起利得スイッチパルス発生実験を行った。GaAs多重量子井戸試料と類似したパルスダイナミクスを観測し、現象の普遍性を確認した。実験と比較するために、パルス発生特性をシミュレートする計算コードを開発した。ポンププローブ型四光波混合実験に用いる5psパルス幅のゲインスイッチレーザーと300fsパルス幅のチタンサファイアレーザーの同期に関しては、これまではパルス間タイミングジッターが7.6psであったので、その改善のための回路について、中国・華東師範大学の専門家らと検討を開始した。 ポンププローブ位相緩和時間計測で、キャリア形成ポンプ光が弱励起の条件から励起子モット転移点を超えて反転分布度が増加する領域へと変化するとともに、位相緩和時間が数psから一度大きく減少した後に再び伸長するという実験結果について、検討を進めた。半導体ブロッホ方程式理論の2次摂動レベルまで含めた散乱項の計算を行い、反転分布の増加と共にキャリアキャリア散乱が抑制され位相緩和時間が伸長するという解釈が定性的に可能であることが示された。一方、まだ定量的な不一致が残っており、原因を調査検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光励起利得スイッチングのパルスダイナミクスの普遍性が確立しつつある。位相緩和時間計測実験に関しては、半導体ブロッホ方程式理論にもとづく計算との定量的な一致には至っていないが、定性的な理解は得られつつある。次年度には、論文投稿まで達成できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
秋冬季にCOVID-19感染流行の第2波、第3波が生じると、在宅勤務に切り替えざるを得なくなるので、夏季に実験研究を極力済ませる。秋冬季に、デスクワークのみとなっても、解析を行って論文投稿までを完了できるように、スケジュール管理に留意する。
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