研究課題/領域番号 |
18H01471
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
白樫 淳一 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00315657)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 人工知能 / 原子接合 / エレクトロマイグレーション / FPGA / ナノデバイス |
研究実績の概要 |
本研究では、人工知能(Artificial Intelligence: AI)を用いて金属細線でのエレクトロマイグレーション(EM)現象を制御し、金属原子を室温で一つずつ移動させることが可能な、AIに支援された原子の移動・操作技術の開発を行う。具体的には、フィードバック制御型エレクトロマイグレーション(FCE)法へのAIの適用を目指す。ここでは、AIがFCE法の実験パラメータを自律知能的に決定し、原子スケールの接点構造である「原子接合」や原子スケールのギャップ構造である「原子ギャップ」を作製する。これらの技術を応用し、原子1個~数個の島電極を有する単電子トランジスタである「“単原子”トランジスタ」の実現を目指す。これより、“エレクトロマイグレーション”という簡単な手法を用いてAIに支援された原子スケールデバイス技法の開拓を行い、人間の経験に頼らない、AIを利用した単一原子機能の発現・制御手法の確立を目指す。 初年度(平成30年度)では、AIシステム(学習・評価・推論エンジン)の構築とAI支援型FCE法の開発を行った。具体的には、金属細線におけるEMの発現強度を印加電圧のフィードバック手法により制御し、急激なEMの進行を抑制しながら徐々に金属原子を移動させるFCE法を開発した。さらに、FCE法での各種実験パラメータをAIに自律決定させるための学習エンジン・評価エンジン・推論エンジンを構築した。これら3種類のAIエンジンをFPGAに実装することで「AI支援型FCEカスタムハードウェア」を開発した。これより、新たにFCE実験を行うたびにデータベースが増強され、推論エンジンの学習強度が上がるため、実験を行えば行うほど、原子接合の形成により適したFCE実験の実行が可能になる。本システはFPGAに実装されており、AIの学習からFCEの実験制御までを高速なハードウェアタイミング分解能(マイクロ秒)で実行できることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来、FCE法による原子接合や原子ギャップの作製では、各種・多量な実験パラメータの調整を人間の経験や試行錯誤的な作業に頼っていた。初年度(平成30年度)は、AIによりFCE実験パラメータの自律知能的な設定を行い、人間が介在せず、過去の実験データに基づいて機械(AI)が自律的・知能的に研究や実験を遂行するシステム:AI支援型FCEカスタムハードウェアを開発した。過去50サンプル分のデータにより構成されたデータベースを用いたAu原子接合の作製実験では、本システムにより、Au細線のコンダクタンスG(量子化コンダクタンスG0(=2e2/h)で規格化)が量子化しながら200ミリ秒以内に1G0以下まで減少していることが確認された。
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今後の研究の推進方策 |
次年度(平成31年度)では、AIの支援によるFCE法を用いた原子接合や原子ギャップの作製を行う。具体的には、FPGAに実装されたAI支援型FCEカスタムハードウェアにより、Auの金属細線に対してAI支援型FCE法を適用し、室温でのコンダクタンス量子化をその場で観測しながら原子を一つずつ移動させ、「原子接合」や「原子ギャップ」を作製する。
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