研究課題
本研究は、ダイヤモンド中の量子発光構造である窒素-空孔センターなどを高空間分解能センサとして用いることで、デバイス内部で発生する物理現象を直接捉えることを目的とする。本年度は、ダイヤモンドデバイス中の電界ベクトル計測の解析手法の確立、高空間分解能計測のための技術開発および高速温度計測に向けた基盤技術構築を実施した。これまでにN-V軸に垂直方向に磁場を印加することで、複数のNVセンターを分離してそれぞれの軸に対する電界を計測するベクトル電界計測を実施してきた。本年度は、この計測結果の解析手法を進展させ、デバイス中の電界ベクトルの評価手法を確立した。光検出磁気共鳴(ODMR)スペクトルの分裂幅から電界を評価する際、N-V軸の反転(N-V, V-N)の影響などの効果を考慮する必要がある。実験で得られたODMRの分裂を2つの軸からの平均と取り扱うなどで解析を進めることで、電界ベクトルを評価した。さらに、CCD により検出した電界の計測感度を見積もった。回折限界を超える計測に関しては、必要な配線構造を満たすデバイス構造を設計し、デバイスの形成を進展させた。また、高速温度計測に向けて、ダイヤモンド内の量子発光構造のひとつを用いることで計測系を構築した。量子構造からの発光スペクトルは温度が上昇することで、長波長側にシフトする。この変化を測定および解析に時間が必要なスペクトル計測ではなく、狭線幅のバンドパスフィルタを用いることで計測する新たな手法を開発した。
2: おおむね順調に進展している
ダイヤモンドデバイス中の電界ベクトル計測の解析手法の確立、高空間分解能計測のための技術開発、さらに高速温度計測に向けた基盤技術構築を実施した。これらはデバイス内の量子センシングを基盤技術となるものである。
今後の研究として、高空間分解能を有するデバイス量子計測の開発に取り組む。これまでに、デバイス構造、デバイス内のNVセンターの特性、および計測手法の選定などを進めてきている。来年度は、このデバイス開発と計測系の確立を通して高空間分解能計測を実施する。
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
Applied Physics Express
巻: 14 ページ: 032001-1-5
10.35848/1882-0786/abd868
PHYSICAL REVIEW APPLIED
巻: 14 ページ: 044049-1-11
10.1103/PhysRevApplied.14.044049