研究課題/領域番号 |
18H01474
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山田 智明 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (80509349)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 強誘電体 / 分極 / 人工超格子 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は「分極が不連続な人工界面」を用いて、単体の強誘電体では達成できない「可逆的かつ大きな分極回転」を実現することにある。具体的には、 ・分極の方位が異なる強誘電体/強誘電体人工界面における分極の遷移構造 ・分極の有無が異なる強誘電体/常誘電体人工界面における分極の渦(ボルテックス)構造 の2つに着目し、エピタキシャル成長した急峻な人工界面を多数有する超格子薄膜を作製し、電場に対する分極応答を系統的かつ定量的に明らかにする。 H30年度は「分極の方位が異なる強誘電体/強誘電体人工界面における分極状態と応答特性の解明」について研究に取り組んだ。 具体的には、(100), (111)エピタキシャル成長した正方晶Pb(Zr,Ti)O3 (PZT)/菱面体晶PZT人工超格子薄膜を作製し、その構造、分極状態および電場に対する応答特性を評価した。その結果、一層の厚みが3 nmから20 nmの範囲で、X線回折で明瞭な超格子反射が確認され、急峻な界面を有する人工超格子薄膜の作製に成功した。さらに走査型透過電子顕微鏡像の解析から、(111)エピタキシャル成長した人工超格子薄膜では、一層の厚みが5 nm以下になるとモノドメインを形成し、その際の両層の分極方位はバルクのそれとは大きく異なり、正方晶と菱面体晶の中間の方位であることが明らかになった。これらの試料では、一層の厚みの減少とともに圧電応答が増加することから、(111)エピタキシャル成長した人工超格子薄膜における圧電応答の増加は、分極が不連続な人工界面がもたらす特異な分極状態によることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、H30年度は項目「分極の方位が異なる強誘電体/強誘電体人工界面における分極状態と応答特性の解明」についてのみ取り組む予定であった。しかし「研究実績の概要」に記した内容だけでなく、PZTとは異なる材料系である(K, Na)NbO3の薄膜についても分極応答特性の新たな知見が得られたほか、H31(R1)年度の予定項目である「分極の有無が異なる強誘電体/常誘電体人工界面における分極状態と応答特性の解明」について、すでに試料作製を開始している。従って、当初の計画より進展している状況にある。
|
今後の研究の推進方策 |
上記のように、現在、H31(R1)年度の予定項目である「分極の有無が異なる強誘電体/常誘電体人工界面における分極状態と応答特性の解明」の試料作製をすでに開始している。そこでH31(R1)年度は、計画通り、項目「分極の有無が異なる強誘電体/常誘電体人工界面における分極状態と応答特性の解明」の研究に集中的に取り組むほか、進展に応じて次の項目「熱力学的現象論による分極状態と応答特性の理論的解明」に進む。
|