研究課題
本研究は、高い分子配向性の有機半導体結晶と強い光閉じ込めの微小共振器構造を組み合せた光子-励起子間相互作用の増強効果により、その発光機能を高性能化することを目的とする。今年度の成果としては、分子が共振器面内方向に強く配向したBP1T-CN有機単結晶を活性層とした高Q値マイクロキャビティを作製し、室温下における共振器ポラリトンの特性を調査した。強結合の形成について、2種類の高Q値マイクロキャビティ(DBR/BP1T-CN/DBRおよびAg/BP1T-CN/DBR)を作製し、それぞれ172 meVと146 meVのラビ分裂エネルギーを観測した。ポラリトン状態の減衰係数の観点から2種類のマイクロキャビティにおける光子-励起子相互作用エネルギーの違いについて検討したところ、金属/有機界面での励起子の不活性化は、強結合の形成を妨げる働きをすることが明らかになった。この物理モデルをより詳しく検証するために、TC-SPC法による時間分解発光測定システムを新規配備し、金属ミラーの採用によって発光減衰係数は低下することを確認した。また、強パルス励起によるポラリトンレージングの実証を試みた。ブルーシフトや発光寿命の現象などポラリトンレージング特有の現象が確認でき、ポラリトンレージングである可能性が高いことを示した。また、BP1T-CN以外の活性層材料も複数検討を開始しており、次年度の早い時期に発表予定である。
2: おおむね順調に進展している
BP1T-CNによるVCSEL型での微小共振器においてはほぼ研究計画調書にある通りで実施できている。海外研究機関との共同研究として進めている超高速時間分解発光測定に関しては、その前年度までの成果を論文として取りまとめて出版した。また、新たな高品質サンプルを作製することに成功し、ポラリトン凝縮発光の閾値についても現在、測定と解析を進めることができている。その一方で、実験を進める中で、ポラリトン長寿命化に重要とるパラメターを見つけ出しており、それに適合した材料により新たな検証も進めている。
今後も共振器ポラリトン状態の長寿命化とポラリトン凝縮の低閾値化に向けた検討を、使用する有機材料と共振器構造の両方に着目して進めていく。特に2次元フォトニック結晶型での共振器構造の導入検討を本格化させていく。そのためには発光波長や屈折率といった材料物性との兼ね合いを新たにすり合わせていく必要がある。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
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