研究課題
シリサイド半導体β-FeSi2はFeの3d軌道が支配的な3d軌道バンド構造を有し、特徴ある光学機能を発現する。しかし、3d軌道バンドでは、伝導帯(3d)-価電子帯(3d)間の光学遷移確率が極めて小さくなるデメリットがある。β-FeSi2のデバイス特性を改善するには、3d軌道バンドの特徴(利点)を失わず、このデメリットを抑制または解消する新たな学術研究が必要不可欠である。そこで本研究課題では、8族元素であるFeの一部を同族元素のRuで置換したβ-(Fe1-xRux)Si2に着目した。β-FeSi2とRu2Si3の混晶半導体であるβ-(Fe1-xRux)Si2の価電子帯では、Si 2p軌道とFe 3d軌道が混成したpd混成軌道バンドが形成され、その軌道混成度はRu組成により制御できると期待される。この価電子帯でのpd混成軌道バンド形成により、β-(Fe1-xRux)Si2では3d軌道バンドの利点が失われず、デメリットである正孔の局在、バンド間禁制遷移が解消できると考えられる。本研究課題では、マグネトロンスパッタリング法によりβ-(Fe1-xRux)Si2薄膜をSi基板上に作製し、電気および光学特性評価によりpd混成軌道バンド形成の検証を行った。その結果、x =0.6という高濃度Ru添加β-(Fe1-xRux)Si2の作製にはじめて成功した。X線回折測定によりRu添加に伴う格子定数変化を、ラマン分光測定によりFeサイトのRu置換を実証した。そして、β-(Fe1-xRux)Si2からの光通信波長帯1.5 μmの発光を観測し、Ru添加濃度の増加に伴いその発光強度が増大することを明らかにした。この発光強度の増大はpd混成軌道バンド形成に由来すると解釈され、おおむね研究計画通りの結果を得ることができた。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Japanese Journal of Applied Physics : Conference Proceedings
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