研究実績の概要 |
Re元素選択が構造および臨界電流密度(Jc)に及ぼす影響をさらに詳細に議論するために、Ba2(Gd,Nb)O6を添加したYBa2Cu3O7(YBCO)膜をパルスレーザー蒸着によって作製し、Jc特性の評価を行った。Ba2(Gd,Nb)O6では巨視的ピン力の最大値(Fp,max)が10GN/m3程度となった。これはRe=YbやLuとしたときよりも低い値であり、ダブルペロブスカイトナノロッド材料のRe選択が界面やひずみに影響を及ぼし、Jc特性を決定していることを示唆している。 ナノコンポジット膜ではRe選択がナノロッドとマトリックスの両方に影響するため解釈が難しい。ナノロッドに関する知見はこれまでに得られており、マトリックスが磁束ピンニングに及ぼす影響を明らかにする必要がある。そこでpure YBCO膜においてRe置換を行った。YBCOにNdをドープするとTcが減少した。一方YbをドープしてもTcは変化しなかった。YBCOにNdとYbを同時にドープすると、NdによるTc減少は抑制された。最も高いJcを示したY0.63Yb0.27Nd0.1Ba2Cu3O7薄膜では77KのFp,maxは4.7 GN/m3であった。一方20Kでは巨視的ピン力(Fp)は16 TでFp=270 GN/m3を示した。このFpはpure YBCOの値よりも高く、YbとNdを同時にドープすることでTc劣化を抑制したうえでピンニングセンターを導入できることが分かった。Ba2(Nb,Re)O6ナノロッドを導入するとReがマトリックス内に存在することがある。このような共ドープがマトリックスに及ぼす影響を考慮の上、ナノロッド材料を選択する必要があることがわかった。 またIBAD基板上にpure YBCO膜を作製しTc=88Kを得ることができた。さらなる条件の最適化が必要である。
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