HfO2系強誘電体をバリア層とする強誘電トンネル接合(FTJ)における抵抗スイッチングの発現と特性評価を行った。評価用のデバイスとして、原子層堆積(ALD)法、およびパルスレーザー堆積(PLD)法により作製した膜厚が5 nm以下のZrドープHfO2をバリア層に用い、ITOを下部電極、Ptを上部電極とするFTJを作製し、電流‐電圧特性を測定した。BaTiO3等のTi酸化物強誘電体をバリア層に用いたFTJでは、バリア層厚が4 nm程度で抵抗スイッチング現象が観測されているが、HfO2はBaTiO3等と比べてバンドギャップが大きいことから、HfO2-FTJはトンネル障壁が高く、トンネル電流が小さくなるため、抵抗スイッチングが観測できるトンネル電流を得るためにはバリア層厚を薄くする必要があると予想される。しかし、ALD法で作製した膜厚10 nm以上のZrドープHfO2膜は良好な強誘電特性を示すものの、バリア層厚4 nm程度のFTJはリーク電流が大きく、強誘電性、抵抗スイッチング現象ともに観測できなかった。一方、PLD法で作製した素子の場合、バリア層厚4.2 nmのFTJではトンネル電流が小さく、抵抗スイッチング現象は観測できなかったが、バリア層厚を薄くしていくとトンネル効果を反映してトンネル電流が指数関数的に増大し、バリア層厚が3.5 nm以下のFTJにおいて電流-電圧特性にヒステリシスが観測され、抵抗スイッチング現象が発現した。しかし、抵抗スイッチングによる抵抗変化は時間とともに急速に緩和し、不揮発な抵抗変化を示さなかった。そのため、不揮発な抵抗変化を必要とするスパイク時刻依存シナプス可塑性(STDP)の実証には至らなかった。
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