研究課題
筋肉が発する筋電位からユーザーの動きや意図を検知し機器に伝える筋電型マン・マシンインターフェース(MMI)は、電動義手やロボットなどの直感的操作を可能にする。しかし実際には信号の誤検出が多く、思い通りに操作することは非常に困難である。本研究は、誰もが日常生活で容易に使える筋電型MMIを目指し、独自の非線形筋電検出手法をベースにユーザーや環境に適応する技術を開拓し、筋電検出精度の大幅向上を図ることを目的とする。さらに感覚フィードバック機構を省電力でコンパクトに実装する技術を開発し、筋電検出デバイスと一体化を図り操作性をより高める。平成30年度の研究成果を以下にまとめる。(1)ユーザーに応じて非線形筋電検出系のパラメータを最適化する機構を実現し、これを一体化し携帯可能なシステムに発展させた。さらにゆらぎにロバストなロボットアーム制御が可能であることを実証した。(2)自動調整機構実装非線形筋電検出系のユーザー適応性について8名の被験者により機能検証を行った。7名の被験者に対して有効な最適化が自動的に行われて基準となるSN比と応答速度が達成された。しかし1名のみ所望のSN比が得られなかった。この問題に対し非線形素子並列数を増やすことで問題解決できることを実験的に確認した。(3)複数個の小型偏心モーター振動子を組合せ多様な表現力をもった人工感覚フィードバックシステムを実現するため、その基礎となる人体表面での振動状態を評価する方法を検討し、ピエゾ振動センサを用いた独自の測定系を構築した。また振動子の装着圧力が本人工感覚生成に重要であることがわかった。(4)検出した筋電位を適切に処理して所望の機械操作につなげるための方法として、身体を非線形素子ネットワークと見なし筋電位などの生体信号を同時多数センシングし学習重み付けすることで所望の時系列関数を生成するバイオリザバー計算の着想を得た。
1: 当初の計画以上に進展している
ユーザーや使用環境に応じて最適な筋電検出を自動パラメータ最適化するシステムを開発し、その機能をロボットアーム制御実証した。また、ユーザーが異なる場合において感度と応答速度の観点で適応性があることを複数ユーザーによる実験で実証した。さらに本システムをバッテリー駆動かつ筋電信号を無線通信できるようにし一体化したモバイルシステムへと発展させることができ、目標の半分ほどが1年で達成された。本研究と並行して行っている生体様コンピューティングの研究から、検出筋電信号を所望の機械動作につなげる全く新しいコンセプトとしてバイオリザバーコンピューティングの着想を得た。従来のニューラルネットによる学習より小型かつ簡便なシステムでより多様な時系列信号処理が可能になる強力なシステムになりうる。これは予定外の成果である。小型偏心モーターの振動による擬似感覚生成においては、振動の精密制御のために身体上の振動を評価するシステムの構築と振動子集積デバイスの試作に時間を要したが、計画の振動合成による超低周波振動生成とその制御の準備が整った。
小型偏心モーター振動子集積と振動精密制御による人工感覚生成を行う。複数の小型振動子を一体化し、振動周波数、位相、振動させる振動子の時空間配置を電子的に精密に制御することで、人工感覚として与えることができる情報量を高める。昨年度の研究により振動状態が振動子の装着圧力に依存し変化することがわかったため、装着毎にユーザーが感知する振動が再現するような振動子装着圧力制御方法を検討する。これら生成された多様な振動情報に対するユーザーの感度を実験評価し、生成振動とユーザー感覚を結ぶ関数系を構築する。さらに、人工感覚フィードバックが身体性と結びつくように、前年度着想を得たバイオリザバー計算のアーキテクチャを設計する。次いでこれを実現するための複数の生体信号センシングを行うシステムを構築し、一人のユーザーから複数の複雑な生体信号が得られることを示す。
すべて 2019 2018 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 4件、 招待講演 3件) 図書 (1件) 備考 (2件) 産業財産権 (2件)
Journal of Applied Logics
巻: 5 ページ: 1799-1814
Proceedings of 2018 IEEE 48th International Symposium on Multiple-Valued Logic
巻: ISMVL2018 ページ: 127-131
10.1109/ISMVL.2018.00030
http://www.rciqe.hokudai.ac.jp/labo/qid/
https://www.ist.hokudai.ac.jp/netjournal/net_44_1.html