筋肉が発する筋電位からユーザーの動きや意思を読み取り機器に伝える筋電型マン・マシンインターフェース(MMI)は、電動義手やロボットなど様々な機器の直感的操作を可能にする。しかしまだ「思い通り」と感じられる操作性を実現できていない。本研究では、誰もが日常生活で容易に使える筋電型MMIを目指し、独自の非線形筋電検出手法をベースに操作性劣化要因である筋電信号の誤検出を抑制しかつ検出精度の向上を図る。2020年度は、ユーザーの随意運動の高精度識別、および、随意動作を補助する無意識的動作の機構について検討し以下の成果を得た。 (1) 随意動作の高精度識別のためニューラルネットの一種であるレザバー計算系の応用を行った。従来の機械学習識別ではニューラルネットのノードを外部回路に担わせていたが、本研究ではノード機能を身体に委ねる新規構成である。ユーザーの随意動作は骨格筋動作を指示する複雑な活動電位列に変換されるが、ユーザーの意図を入力とみなすと複雑波形は常に入力を反映している。これらはレザバー計算で要請される複雑性とコンシステンシに対応する。そこで前腕の複数箇所より筋電を取得しレザバー出力とみなしたシステムを構築した。筋電位と手の空間運動を同時計測し学習した結果、表面筋電の線形結合のみでは手の運動を適切に再現できなかったが、筋電信号の時間積分をノード信号として追加することで再現度を大幅に高めることに成功した。 (2) 無意識的動作として、MMIでは考慮されていなかった感覚器信号から直接生成される動作「反射」の機能模倣について検討した。反射動作は状況に応じてMMIが自律的に最適化する必要があり、本研究では独自のアメーバ型最適化技術を適応した。反射機能実装に向け、解法可能な問題のバリエーションの増加や、自律歩行ロボットを用いた未知環境における行動生成などを実現した。
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