本研究では、磁性体の超高速不揮発性メモリを内蔵する高性能な量子伝導スピントランジスタを実現し、トランジスタと不揮発性メモリの間のレイテンシを実質的にゼロにすることができる。本研究のスピントランジスタはノーマリオフ論理回路やニューロチップなどの非ノイマン回路に応用でき、ディープランニングや人工知能などの次世代コンピューティングの基盤技術を提供する。今まではIV族半導体のチャネルを有するスピンバルブデバイスを中心に、スピン注入と検出に有効なFe/MgO/Ge/Si基板の積層構造の最適化を行った。MgOバリア厚さを系統的に変化させ、さらに、MgOとFeの間に薄いMg層を挿入することによってFeの不活性層を抑えた結果、世界最高(-3.6%)のスピンバルブ比およびスピン依存出力電圧(25 mV)を達成した。さらに、2020年に下記の研究成果を達成した。 1.III-V族半導体分子線エピタキシャル結晶成長法および極微細加工技術を用いて、MnGa垂直磁化膜からなるソースとドレインおよびIII-V半導体のGaAs量子井戸をチャネルとするナノスケールのスピンバルブ構造を作製し、世界最高性能の12%のスピンバルブ比および33 mVのスピン依存電圧出力を達成した。 2.Fe/トンネルバリア/Siのスピン注入構造において、トンネルバリアとしてのMgO(スパッタリングおよびMBE製膜)、MgAl2O4(スパッタリング製膜)およびAl2O3(ALD製膜)を評価し、MgO(スパッタリング製膜)が最適なトンネルバリアであることを見出した。
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