本研究は、磁性ジョセフソン接合であるπ接合を超伝導ロジックAQFPに取り入れることで、プログラマブルな超伝導回路の実現を目指す。2020年度は当初の計画通り、プログラマブルAQFP回路の作製と動作実証に取り組んだ。 前年度までに構築したπ接合-AQFP回路作製の基盤技術をベースとして、実際の回路素子の作製と改良に取り組んだ。作製素子の評価結果を踏まえ、AQFP回路部とπ接合部の結合方法や素子構造、π接合材料等の詳細な検討を行った。それを元に作製プロセスの改良と試作を繰り返し、最終的にはNb4層プロセスにより作製されたAQFP回路上に、π接合を後工程により作製・結合する回路作製手法を採用・作製した結果、本研究の目標であったπ接合が機能しているプログラマブルAQFP回路の開発に成功した。 作製されたプログラマブルAQFP回路(AND/ORゲート、ルックアップテーブル)の評価を液体ヘリウム中で行った。まず初めに、プログラマブル回路と同じチップ上に作製された二種類の超伝導量子干渉計(SQUID)を評価した。ここで、片方のSQUIDにのみπ接合が含まれている。測定の結果、二種類のSQUIDは周期がπだけずれた電圧/磁束特性を示し、π接合によって想定通りに超伝導体の位相がシフトされていることを確認した。次に、π接合を含む超伝導ループをメモリ(πメモリ)として用いることで論理機能を切り替え可能な、AND/ORゲートの動作実証を行った。πメモリの値を変更することで、想定通りにANDとORの論理演算を切替え可能なことを示した。さらに、4つのπメモリの値を変更することで任意の2入力論理演算を実行可能なルックアップテーブルの動作実証を行い、すべての論理機能を切り替え可能であることを示した。以上より、π接合により論理機能を切替可能なプログラマブルAQFP回路の動作実証に成功した。
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