研究課題/領域番号 |
18H01495
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
前澤 宏一 富山大学, 学術研究部工学系, 教授 (90301217)
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研究分担者 |
安藤 浩哉 豊田工業高等専門学校, 情報工学科, 教授 (30212674)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | センサ / ΔΣ変調 / 発振器 / 共鳴トンネル / マイクロフォン / FPGA / ノイズフロア / THz |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、THz に達する超高周波発振器を用いた周波数ΔΣ変調方式に基づく新しいセンサ技術を開拓することにある。周波数ΔΣ変調方式は、高分解能・高ダイナミックレンジを特徴とするΔΣアナログ-デジタル変換器(ADC) のコアであるΔΣ変調器を、電圧制御発振器(VCO) を用いて実現する方法である。通常必要なフィードバックデジタル-アナログ変換器(DAC) を必要とせず、高速動作、高帯域化に適している。このVCO を何らかの物理量で周波数が変化する発振器に置き換えれば、シンプルな構成で高性能なセンサが可能となる。このセンサの性能は、発振周波数に強く依存する。我々は、これに共鳴トンネル素子を基盤としたTHz 領域の発振器を用いることにより、超高性能なセンサ技術を開拓する。 本年度は、周波数ΔΣ方式センサの基本となる二つのセンサについて、試作とその評価を行った。まず、RTDとサスペンデッドマイクロストリップ共振器を用いたFDSMマイクロフォンセンサについて検討した。これは、マイクロストリップ線路の裏面のGND面を金属薄膜として、空気を挟んで対抗させるものである。金属薄膜と基板裏面との距離によって伝搬速度が変化することを利用する。まず、デバイス構造、作製プロセスの検討を行い、FR-4プリント基板上にRTDチップを実装し、プロトタイプ素子を試作した。これに対し、昨年度試作したFPGAを用いたFDSM測定系による評価を行い、基本動作を実証した。また、本センサのコアである共鳴トンネル発振器についても、その安定性の向上を目指した硬い発振器を試作し、基本動作を実証した。 次に、空洞共振器とHEMTを用いたマイクロフォンセンサについても検討を進めた。特に、特に共振器のQ値向上と発振器の位相ノイズ低減について検討し、96kHz帯域幅で60dB以上のダイナミックレンジを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、RTDとサスペンデッドマイクロストリップ共振器を用いたFDSMマイクロフォンセンサの提案と、プロトタイプ素子による基本動作確認を行った。また、本センサのコアである共鳴トンネル発振器についても、その安定性の向上を目指した硬い発振器を試作し、基本動作を実証した。さらに空洞共振器とHEMTを用いたマイクロフォンセンサについても検討を進め、96kHz帯域幅で60dB以上のダイナミックレンジを実証した。また、FDSM測定系についてもFPGAによりほぼリアルタイムの評価を可能とした。
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今後の研究の推進方策 |
基本動作が確認されたFDSMセンサについて、再度、設計・試作を行い、性能向上を実証する。また、共鳴トンネル素子を周波数ΔΣ方式センサに使用するための基本回路について検討を進める。 サスペンデッドマイクロストリップセンサについては、材料の変更、発振周波数の向上による感度向上を目指す。具体的には、基板誘電率の向上、裏面GNDプレーンと基板間のギャップの縮小を図る。より誘電率の高いGaAs/InP基板を用いるとともに、裏面金属メンブレンのプロセス技術、構造設計を行い、デバイスを試作する。 また、空洞共振器とHEMTを用いたマイクフォンセンサについても検討を進める。さらなる性能向上を目指し、高いQ値の共振モードを利用する。そのための、励起条件、回路構成を検討し、試作を行う。また、空洞共振器の研磨、メッキによるQ値の向上、ノイズフロアの低減について検討する。さらに、本センサに適した新しい空洞共振器形状について提案し、電磁界シミュレーションにより検討する。
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