本研究の目的は、THz に達する超高周波発振器を用いた周波数ΔΣ変調方式に基づく新しいセンサ技術を開拓することにある。周波数ΔΣ変調方式は、高分解能・高ダイナミックレンジを特徴とするΔΣアナログ-デジタル変換器(ADC) のコアであるΔΣ変調器を、電圧制御発振器(VCO) を用いて実現する方法である。通常必要なフィードバックデジタル-アナログ変換器(DAC) を必要とせず、高速動作、高帯域化に適している。このVCO を何らかの物理量で周波数が変化する発振器に置き換えれば、シンプルな構成で高性能なセンサが可能となる。このセンサの性能は、発振周波数に強く依存する。我々は、これに共鳴トンネル素子を基盤としたTHz 領域の発振器を用いることにより、超高性能なセンサ技術を開拓する。 本年度は、空洞共振器マイクロフォンセンサのさらなる高性能化とともに、新しい応用について検討を進めた。空洞共振器には様々な共振モードがあるが、これまでは、比較的単純で励起しやすいTE111モードを用いてきた。しかし、このモードは、メンブレンの変位に対する共振周波数変化が比較的小さく、またQ値もさほど大きくない。ここでは、TE111と同様な方法で励起可能なTE113モードについて検討した。外部アンプを用いたループ型発振器を構成し、TE113モードでの発振を確認するとともに、7dB以上の感度の増大を確認した。 次に、本マイクロフォンセンサの新たな応用について検討を行った。このセンサはメンブレンの変位を検知するものであり、高性能な変位計としても使うことができる。ここでは本センサの特徴を生かした表面粗さ計/AFMへの応用を提案した。この方式は1mmの段差のある表面の1nm以下の微細構造の測定が可能となることが期待できる。簡易的な装置を試作し、その基本動作を実証した。
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