InSb-nMOSFETの特性改善のため、昨年に引き続き、InSb/Al2O3界面に数原子層程度の薄いGaSb層を挿入し、界面準位をInSbチャネル層から離した構造のデバイスを作製した。GaSb層の厚さや成長温度を変更した試料を作製したが、大幅な特性改善は見られなかった。これは、GaSb層の層厚が十分でないため、連続膜になっておらず、界面準位の影響が少なからず残っているものと考えられる。 GaSb-pMOSFETの作製にも取り組んだ。表面再構成制御成長法を用いて成長させたGaSb層は、面内回転はしないものの、12.2%もの格子不整合にもかかわらず、単結晶成長する。この高品質GaSb層を用いたpMOSFETを作製し、FET動作を確認した。しかし、特性にばらつきがあり、また、同一のプロセスを用いて作製したデバイスであっても、動作しない物もあり、GaSb層の特性のばらつきが大きく影響しているものと考えられる。そこで、試料サイズを大面積化し、1つの(特性にばらつきのない)基板から切り出した、試料を用いて異なる条件のプロセスを行えるように蒸着装置のマニピュレータ部の改造を行った。ところが、現時点で新しいマニピュレータではこれまでと同様の特性を示す薄膜が得られておらず、研究が停滞した。 立体構造を持ったInSb系MOSFETの作製を念頭に、InSbナノワイヤーの成長に取り組んだ。希望の位置にナノワイヤーを成長させるため、金触媒のパターニング法としてナノスフィアリソグラフィーを用いた。これは、φ200nmのナノスフィアを最密構造に配列し、金蒸着した後ナノスフィアを剥離することで、金がパターニングされるものである。Si基板上にナノスフィアを配置し、金蒸着することでパターニングに成功したが、InSbナノワイヤーはほとんど形成されず、今後、堆積条件の最適化が必要である。
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