研究課題
テラヘルツ波を利用したナノバイオセンシングを行うにあたって、高感度なチップ開発と計測システム構築が重要となる。本年度は、主に、非線形効果の1つである光整流によって生成するテラヘルツ波を利用したテラヘルツチップの開発を行い、テラヘルツ電場増強が見込まれる表面構造の最適化とその評価を行った。また、これ専用の高感度計測システムの構築を行った。チップ素材には、波長1.5μm帯フェムト秒レーザーに対して効率よくテラヘルツ波発生が見込まれるヒ化ガリウム(GaAs)を採用した。テラヘルツ波は励起レーザースポット点から光整流により高密度かつ波長限界を超えた極微小テラヘルツ点光源として生成される。この時、表面にメタアトム構造(メタアトム=メタマテリアルを構成する基本素子)を作製し、そのアレイ数、周期、構造非対称性を変化させることで、ある特定の条件を満たしたメタアトムアレイ表面において、極めて強いテラヘルツ電場増強が起こることが分かった。この表面に対して、直接流路構造やウェル構造を作製することで、溶液ベースの生体関連や生体組織の高感度なテラヘルツ計測が行えることが分かった。計測については、サンプルの性質に合わせて、サンプル内を透過したテラヘルツ波と、サンプル表面を反射したテラヘルツ波が検出可能な本チップ専用のハイブリッド計測システムを整備した。以上により、テラヘルツバイオセンシング用の高感度計測プラットフォームの基礎を構築した。
2: おおむね順調に進展している
テラヘルツチップ開発では、局所テラヘルツ光源から発生するテラヘルツ波とメタアトムアレイ表面の最適化により電場増強効果を観測することができた。この表面に対して流路構造を作製することで、実量わずか70ピコリットルの溶液に対しても、サブフェムトモルの超高感度での濃度センシングと高感度な分光測定が行えることが分かった。本チップ専用の計測システムの土台も完成し、生体関連溶液の高感度な分光測定のみならず、生体関連組織の、空間分解能を超えた高分解能なテラヘルツイメージング測定も行うことができている。
テラヘルツチップ開発では、多機能な測定が可能となるマイクロタス/ナノタスへと展開し、様々な生体関連溶液の生化学反応などを時系列で分光に挑戦する。システムでは励起光走査方式を導入し、流路内マルチ計測と、コントロール部との差分計測による高感度化を進めていく。また、チップ上に置いた生体組織の病変部位と正常部位の識別などをラベルフリーで評価が可能なプロトコルについても検討を行う。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 6件、 招待講演 2件)
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