研究課題/領域番号 |
18H01508
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
岩波 光保 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (90359232)
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研究分担者 |
千々和 伸浩 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (80546242)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | コンクリート / 高水圧 / 破壊進展メカニズム / 微細空隙 / 海洋開発 |
研究実績の概要 |
本研究における検討は、①高水圧載荷装置を用いた実験的検討、②FEMに基づく解析的検討の2つから構成される。2019年度の研究実績は、それぞれ次のとおりである。 ①高水圧載荷装置を用いた実験的検討 大水深海域におけるコンクリートの適用性を評価するための基礎的な検討として、高水圧を作用させたコンクリートの力学的挙動を調べるための実験を行った。作製したコンクリート供試体に水深5000mを模擬した50MPaまでの水圧を作用させ、水圧作用による外観上の変化、吸水特性、コンクリート内部のひずみ値、圧縮強度、セメント硬化体中の微小部分の硬さ、セメント硬化体の細孔径分布の変化を調べた。その結果、コンクリート、モルタル、セメントペーストに水圧を作用させた際の力学的挙動の変化は、透水性とセメント硬化体の強さとの関係性で決まり、コンクリートの水セメント比や材齢,混和剤の使用により小さい空隙が多くみられ透水がほとんど生じない供試体において、セメント硬化体が最大水圧に耐えることができないと、外観変状や圧縮強度の低下が生じることが分かった。特に、混和剤の導入により空隙量が多くなると供試体へのダメージが大きくなった。また、水圧作用により、ひび割れやひずみ、圧縮強度に差が生じた原因は、水圧作用によりセメント硬化体が破壊したためであると考えられる。そして、水セメント比が50%、空気量が5%のAE剤を用いたコンクリートについて、50MPaの圧力下で使用する際には、28日以上の十分な養生が必要であることが示唆された。 ②FEMに基づく解析的検討 本検討では、既往の有限要素解析手法をベースとして、コンクリート中の微細空隙への水の侵入・移動を数値解析上で正確に追跡できるようにするため、①の実験結果を再現することを目的に、微細空隙内部における液状水の移動のモデル化など、数値解析手法の高度化を図った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高水圧載荷装置を用いた実験的検討については、過年度に製作した高水圧載荷装置を用いて、高水圧下にあるコンクリートの力学挙動について検討できるようになった。具体的には、水圧負荷中におけるコンクリートのひずみを計測できるようになったこと、水圧負荷後のコンクリートからセメント硬化体を取り出して、その微小硬さや細孔径分布を測定できるようになった。このように、本装置を活用した実験手法をほぼ確立できたことから、本検討は概ね順調に進展していると判断できる。 一方、FEMに基づく解析的検討については、水圧載荷実験の結果を再現できるような解析手法を確立に向けて、コンクリート中の微細空隙中における水の移動を精緻に表現できるモデルを作成することができた。このことから、本検討は概ね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
高水圧載荷装置を用いた実験的検討については、過年度に製作した高水圧載荷装置を用いた実験を引き続き継続する。実験実施のノウハウについては、おおむね習得できたことから、今後はより効率的に数多くの実験を実施する。具体的には、水圧の大きさ、水圧の上昇・下降速度、最大水圧の保持時間、水圧負荷の繰返し回数といった水圧負荷に関する条件、ならびに、コンクリートの含水状態や透水状態、コンクリート中の鉄筋の存在など、コンクリートの特性に関する条件を変化させた実験を継続して行う。これにより、微細空隙中の水の移動に着目した高水圧下にあるコンクリートの破壊進展メカニズムを実験的に明らかにする。 一方、FEMに基づく解析的検討については、コンクリート中の微細空隙中への水の侵入と移動を表現するモデルの高精度化に取り組むとともに、コンクリート中のひび割れや鉄筋の存在が及ぼす影響を考慮した解析についても実施できるように解析手法の高度化を目指す。これにより、高水圧載荷装置を用いた実験により明らかとなった破壊進展メカニズムを数値解析的に表現できる手法を確立する。
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