研究課題/領域番号 |
18H01509
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
國枝 稔 岐阜大学, 工学部, 教授 (60303509)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | TRC / 構造設計 / 構造細目 / 試験方法 |
研究実績の概要 |
炭素繊維などの連続繊維をフレキシブルなネット状に加工し,セメント系材料の補強材に用いたTextile Reinforced Concrete(以下TRCと呼ぶ)は,一般的な鉄筋コンクリートと比較して高強度化,高耐久化,軽量化など,様々な優位性を有しており,今後のコンクリート工学の分野の改革に貢献できる技術である.補修,補強に用いる場合の設計方法,試験方法,かぶりの設定方法,定着の考え方などの構造細目,あるいは耐久性の考え方など,ほとんどが明らかになっていない. 本年度は,以下の項目について明らかにした. (1)ネット状連続繊維およびTRC部材の評価に必要な試験方法の確立 本研究で対象とするネット状連続繊維ならびにTRC部材の評価に用いる試験方法について,昨年度に引き続き,日本で実施可能な試験方法の形状寸法等について検討した.モルタルの種類を変えたTRCの引張試験により,埋込長の異なる付着試験および重ね接手の性能評価試験方法を提案した. (2)TRC部材の構造細目 TRC部材の製造時に必要なかぶり,定着長,重ね継手などの考え方を整理するためのバックデータを実験的に取得した.本年度は,定着長および継手長が異なるはり部材の曲げ試験を行い,通常の異形鉄筋やFRCグリッドの支圧機構に基づく付着メカニズムと異なるため,重継手長は大きく取る必要があること,割裂ひび割れの発生を抑制するために高靭性モルタルを併用した場合でも,微細ひび割れの発生に伴い付着劣化が生じてしまい,部材の性能が低下してしまうことを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TRCの構造細目を設定するにあたり,付着機構に基づく知見が必要である.本研究における一連の実験的検討により,従来までの鉄筋やFRPグリッドにおける考え方が適用できないことを明らかにした.これらの知見を整理し,対外発表も行うことができた. 一方で,面部材として用いる場合に必要な知見,加えて繰返し荷重が作用する場合(疲労に対する抵抗性)の検討が早急に必要であることも明らかとなった.
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの検討では,ある特定のマトリクスと繊維の組み合わせによる検討が主であったことから,今年度はそれらの知見の一般化を行うために,実験的なバリエーションを増やす予定である. 特に,付着機構に基づく知見を一般化するための実験的,数値解析的な検討が必要である.短繊維などの拘束効果を付与した部材であっても,わずかな剥離ひび割れの発生に伴って付着が低下することが前年度までの検討で明らかにされていることから,垂直方向の繊維が及ぼす影響を念頭に置きながら,そのメカニズムの解明と対策案の検討が必要である. あわせて,先述のとおり面部材として用いる場合に必要な知見や繰返し荷重が作用する場合の損傷メカニズムの解明が必要である.
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