研究課題/領域番号 |
18H01510
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中村 光 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (60242616)
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研究分担者 |
三浦 泰人 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (10718688)
山本 佳士 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (70532802)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 鉄筋腐食 / コンクリート片剥落強度試験 / 打音法 / 電磁波レーダ法 / 剛体バネモデル / 剥離強度 |
研究実績の概要 |
30年度は、各種条件での内部ひび割れ進展とコンクリート片剥離強度の関係把握に関する以下の4項目に関する研究を行った。それぞれの項目に関する研究実績は以下の通りである。 ①鉄筋腐食ひび割れ部のコンクリート片剥離強度試験法の確立:腐食ひび割れが供試体内部に存在している供試体に対し、腐食ひび割れ面上部をエポキシ樹脂で供試体と接着した載荷治具で引張荷重を与え、腐食部を剥離させることができる載荷方法を検討した。検討した方法に対応する試験装置を作成し、コンクリート片の剥離強度を評価する試験法を確立した。 ②非破壊試験によるコンクリート内部の鉄筋腐食ひび割れの評価:申請者が検討を進めている打音法と電磁波レーダ法による内部ひびわれ判定手法の高度化と実用化を図った。打音法については、提案している内部欠陥判定方法を実構造物に適用し、実構造物でも適用可能なことを確認した。一方、電磁波レーダ法は、開発している評価方法により内部ひび割れだけでなく鉄筋腐食範囲も検知できる可能性を確認した。これにより、点検データの高度化を図りつつ、コンクリートの剥落リスクを評価する可能性を見いだした。 ③各種腐食条件下のコンクリート片剥離強度ならびに剥離情報の実験的評価:試験装置を作成し、腐食部の剥離強度を評価可能であることを確認した。 ④コンクリート片剥離挙動の数値解析による評価:コンクリートのひび割れ進展を精度よく評価できる剛体バネモデル(RBSM)を用い、鉄筋腐食のひび割れ進展解析を行った後に、剥離強度試験法と同様に荷重載荷を行い、ひび割れ進展や剥離強度を評価できる解析プログラムを開発した。開発したプログラムにより、鉄筋かぶり、鉄筋腐食量、部分腐食による腐食ひび割れ形状を変化させた解析を行い、各要因が腐食ひび割れ上部のコンクリートの剥離強度や剥離範囲に及ぼす影響を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
30年度予定していた、①鉄筋腐食ひび割れ部のコンクリート片剥離強度試験法の確立、②非破壊試験によるコンクリート内部の鉄筋腐食ひび割れの評価、③各種腐食条件下のコンクリート片剥離強度ならびに剥離情報の実験的評価、④コンクリート片剥離挙動の数値解析による評価、の4項目についてはいずれも着実に検討を行っている。 ①の項目については試験装置を完成させることができ、予定通り実施できた。一方、試験装置作成後③の項目については、実験的に剥離強度の評価を行う予定であったが、試験装置作成の材料準備や治具の加工が依頼した業者とのやりとりなどで遅れてしまい、予定の実験を実施するには至らなかった。②の非破壊試験については、実構造物の適用性や鉄筋腐食範囲の探知の可能性などを確認でき、非破壊試験法による内部ひび割れを評価する手法開発としては、予定以上の進捗といえる。④の数値解析手法の開発については、予定通りプログラムを開発でき、いくつかの事例について検証解析が行うことができ、予定通り実施できた。 4項目の内、実験の実施に関する項目は、予定した実験ケースを完了できていないが、他の3項目は順調に進展したので、総合的に「概ね順調に進展している」と自己評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
30年度の成果の延長として、各種条件での内部ひび割れ進展とコンクリート片剥離強度の関係把握に関する以下の4項目の検討を行う。 ①各種腐食条件下のコンクリート片剥離強度ならびに剥離情報の実験的評価:鉄筋かぶり、鉄筋腐食長さ、鉄筋腐食量を変化させた腐食ひび割れ供試体を作成し、構築した剥離強度試験法で、各種状態に対する剥離強度と剥離情報(大きさ、形状、重量、破壊面)を評価する。また、非破壊試験結果と得られた剥離強度・剥離情報の対応について考察を行う。 ②腐食と荷重・環境作用の組み合わせが腐食ひび割れの進展に及ぼす影響の実験的評価:かぶりの剥落に至るきっかけは、自動車などの荷重載荷、水分浸入による凍結融解作用、気温変化による体積変化などが影響する場合もあると推測される。そこで、疲労荷重載荷や温度変化によるかぶりの体積変化をさせた実験を行い、進展した腐食ひび割れが腐食以外の作用によりどのように進展するかを実験的に検討する。 ③コンクリート片剥離挙動の数値解析による評価:昨年度開発した解析手法を用い、実験を行った供試体の評価と各種パラメータの解析を行う。解析結果により、多様な条件での剥離強度と剥離に至るまでの剥離メカニズムを明らかにする。 ④ 非破壊試験によるコンクリート内部の鉄筋腐食ひび割れの評価:剥離強度試験に先立ち、鉄筋腐食による内部ひび割れの状態を把握するための非破壊試験を行う。試験方法は、昨年同様、打音法と電磁波レーダ法を行う。打音試験については、一般的なハンマーによる打音とともに、遠方から非接触で打音可能なレーザー打音法を用い、新たな打音法の可能性も検討する。一方、電磁波レーダ法は、申請者らが検討を進めている評価法により腐食ひび割れ範囲、腐食ひび割れ深さ、鉄筋腐食範囲の推定精度向上を図るとともに、実構造物への適用も試みる。
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