研究課題/領域番号 |
18H01514
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研究機関 | 一般財団法人電力中央研究所 |
研究代表者 |
朱牟田 善治 一般財団法人電力中央研究所, 地球工学研究所, 副研究参事 (90371434)
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研究分担者 |
千葉 大地 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (10505241)
小野 新平 一般財団法人電力中央研究所, 材料科学研究所, 上席研究員 (30371298)
金光 俊徳 一般財団法人電力中央研究所, 地球工学研究所, 研究員 (60815968)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 腐食鉄筋 / 交流インピーダンス法 / ホールセンサ / 四端子計測 / 非破壊検査 / 鉄筋コンクリート |
研究実績の概要 |
本研究は、広範囲にわたる鉄筋コンクリート内部鉄筋の腐食状態を、非破壊で、精度よく、短時間に、かつ現場で測定可能なセンサシステムを実現することを目的としている。2018年度は、研究計画にのっとり、以下の3項目について検討を実施して、以下の成果を得た。 (1)空間磁界マッピング法の開発では、コンクリートに埋設された鉄筋位置の高速同定に向け、空間磁界マッピングに必要な特殊磁界センサを試作した。各種直径の鉄筋を対象とした試実験を行った結果、製作したセンサがかぶり深さ10 cm以上、φ10mm程度の鉄筋に対して有効に動作することを確認した。 (2)多端子型広帯域インピーダンス法の開発では、モルタル中の鉄筋の腐食速度を、表面から非破壊で定量的に計測するために、四端子交流インピーダンス法の適用可能性を実証的に検討した。従来の電気化学的手法では、モルタル内部の鉄筋にリード線を導通する必要があったが、提案手法は、高感度インピーダンスアナライザを腐食計測に適用するとともに、ハイドロゲルシートを用いて金属端子とモルタル間の接触抵抗を低減させることによって、コンクリート表面から鉄筋の腐食状態を計測可能であることを明らかにした。また、提案手法により鉄筋腐食状態を、より高速に測定するために、ホワイトノイズを利用したインピーダンス計測法の改良を行った。 (3)累積腐食量評価モデルの開発では、ホワイトノイズを利用したインピーダンス計測を、屋外の評価現場で実施できるようにするため、ノート型コンピュータのUSBバスパワーで動作する小型計測システムを試作した。試作した計測システムを用いて、鉄筋コンクリートのRC等価回路を測定し、正常に計測できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
広帯域の周波数の交流電流を用いて非破壊で定量的にコンクリート内部の鉄筋の腐食速度を評価できることを明らかにした。実構造物への適用性が不明確で、屋外用の試験装置の開発がまだ中途にあることや、計測時間が長いという課題はあるものの、既設構造物の余寿命を定量的に評価するための基盤技術の開発が計画通り進んだため。
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今後の研究の推進方策 |
3つの研究項目に基づき、今後の推進方法について以下に示す。 (1)空間磁界マッピング法の開発では、ホールセンサを用いた腐食鉄筋の位置同定感度の向上方策を検討する。 (2)多端子型広帯域インピーダンス法の開発では、ホワイトノイズを利用したインピーダンス測定法をコンクリート内部の状態観測に使用し、現在開発中のロックインアンプを利用したインピーダンス測定法との比較を行い、実証を行う。また、実構造物を模擬した鉄筋コンクリート試験体を臨海環境に暴露した試験体に対して四端子交流インピーダンス法を適用し、現場における作業性や適用性を明らかにする。さらに、測定データからコンクリートの劣化や異常を検出するために、測定データ(ホワイトノイズに対する周波数応答パターン)のディープラーニングの適用を検討する。 (3)累積腐食量評価モデルの開発では、現場での実構造物での計測を可能とするために、製作したセンサプロトタイプを屋外に持ち出して使用可能な形態に進化させる。また、製作条件および実際の鉄筋コンクリートのデータを収集し、屋内設置型の高精度計測システムで測定したデータと比較することにより、測定精度の評価を行う。さらに、連続して計測可能なようにセンサネットワークの仕組みを試作する。
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