研究課題/領域番号 |
18H01516
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
内藤 英樹 東北大学, 工学研究科, 准教授 (50361142)
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研究分担者 |
運上 茂樹 東北大学, 工学研究科, 教授 (60355815)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | コンクリート構造物 / 耐震 / 維持管理 / 非破壊検査 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
本研究は、目視点検が容易でないコンクリート構造物を対象として、経年劣化や地震による損傷の非破壊検査の開発と、点検から構造性能までの評価フローの体系化を目的としている。今年度は、非破壊検査の検討においてブレークスルーと手ごたえを得た。
1)非破壊検査: 点検データから構造物の健全性を判定する際に、人の判断 (主観や先入観) を介入させず、AI (機械学習) によって健全/不健全判定を合理的かつ高速に行うことを目的とする。特に、本研究が開発した局所振動試験に対して、時刻歴の加速度波形のデータを周波数応答関数に高速フーリエ変換し、この周波数応答関数を学習データとしたAI (機械学習) によって構造物の健全性判定を行った。その結果、損傷状態でのデータが得られる場合には、教師データありのクラス分類法 (e.g. ニューラルネットワーク、ランダムフォレスト、サポートベクターマシン) によって、正解率90-100%の高精度で多クラスの損傷度判定も可能であった。これは、構造物内部の劣化・損傷の存在によって、周波数応答関数が顕著に変化するためであり、局所振動試験法とAIの高い親和性を示している。さらに、健全状態での点検データしか得られない場合でも、主成分分析によるデータ圧縮と、その再構成時の誤差による異常検知が有用であり、教師データなしの学習法であっても、正解率80%以上の精度で構造物の健全/不健全判定 (二値問題) を可能とした。これはとてもインパクトのある数字である。
2)構造性能評価: 前年度にひとつのケーススタディーを事例として、点検データを入力値とした構造解析 (FEM) と性能評価までを体系化し、その有用性を示した。今年度は、本検討項目に関して大きな進展はなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
コロナ禍の様々な制限により、実験の規模縮小や中止が余儀なくされた。これは当初の研究計画では全く予想していなかった事態ではあるが、在宅時間の増加分をAIの研究に集中させることができ、その結果、大きなブレークスルーに繋がる成果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、目視点検が容易でないコンクリート構造物を対象として、経年劣化や地震による損傷の非破壊検査の開発と、点検から構造性能までの評価フローの体系化を目的としている。これまでに、基礎となる非破壊検査法の開発と構造性能評価までの体系化を図ることができ、さらにAIを導入することにより大きなメリットを生み出すことが示された。今後も引き続き、非破壊検査と構造性能評価にAIを導入し、これらの効率化と高精度化に繋げていく。
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