研究課題/領域番号 |
18H01517
|
研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
齊藤 正人 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (40334156)
|
研究分担者 |
Goit Chandra 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (10782732)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 杭基礎 / 動的相互作用 / 土の塑性化 / 降伏耐力 / インピーダンス特性 |
研究実績の概要 |
初年度の実験的研究では、本研究が目指す杭基礎の耐力特性を含めた大変位領域であることから、従来のアクリル部材から耐衝撃性の高いPOM杭部材を選定した。そのため群杭基礎を対象とした杭頭載荷試験に先立ち、単杭を対象に乾燥砂を用いた杭頭載荷試験を行い、群杭基礎への拡張範囲(本数など)に加えて、本研究が対象とする杭-地盤系の基本特性と実験システム構築を進めた。実施した実験は、1)一方向載荷時における荷重‐変位関係の速度依存性、2)繰り返し載荷時における履歴特性の速度依存性、3)大変形残留変位時からの速度依存性、4)動的インピーダンス特性の振動数ならびに振幅依存性についてそれらの特性を把握した。また、本研究においては地表面近傍に生じる表層地盤の変形特性を捉えるため、載荷前、載荷途中、最大載荷時における空間3方向の土粒子運動を3次元画像処理技術により開発した。後者の開発によって、杭周辺の詳細な土粒子変位量とその分布性状を把握することが可能となった。現在、継続して単杭実験の再現性(複数回の実験による誤差評価)の評価ならびに、群杭基礎を対象とした実験を進めている。 本実験では、杭頭における荷重‐変位曲線に速度依存性のあることが明らかとなった。この実験では杭頭位置にアクチュエータを水平に取り付けた後、所定の3速度(0.01、10、500mm/s)で杭頭を一方向に載荷した。その結果、載荷速度の増加に伴い立ち上がりの初期剛性と耐力が増加する傾向が見られた。この特性は、繰り返し載荷の実験においても同様に確認されている。その際、杭頭の最大変位時における地表面土粒子の移動量は、杭頭速度が大きいほど広範囲にまたその振幅も増加する傾向を示している。動的インピーダンスに関しては、所有する実験装置で載荷可能な最大ストロークを与えての実験を行っており、振動数によって立ち上がりの剛性が変化する現象が確認できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
模型実験に関しては、ノウハウの蓄積されたアクリル杭から耐衝撃向きのPOM材料を持いた杭に変更したことに加えて、現象解明の観点から地表面土粒子の3方向変位量を捉えるためのシステム構築に時間を要した。そのため、当初計画の群杭試験の実施がH31年度の実施となっている状況にある。一方、Plaxis3Dを用いた有限要素法による解析については、計画よりも先行してモデル構築が進んでおり、H31年度は当該モデルを用いたシミュレーション解析と物理的な解釈が進む予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度実施した単杭試験では、計測項目や計測システムの構築(地表面土粒子の3次元変位量測定システム)を行っており、今年度はこれを群杭基礎に適用しその特性を明らかにする計画であり、群杭基礎の実験模型を含めて準備は整っている。具体的には、以下の課題について研究を推進する。 ① 地盤-群杭基礎系の「耐力」を対象とした振動数依存性の評価: H30年度に実施した単杭基礎の実験方法に倣い、中型せん断土槽内に1/20スケールの地盤-群杭実験模型を1g場で製作し、杭頭位置における復元力特性(耐力)を静的載荷および動的載荷により評価する。 ② 耐力を対象とした振動数依存性のメカニズムの解明: 3次元非弾性有限要素法(FEM)による模型実験のフィールドを再現し、実験結果との比較によるValidationを行う。検証後、地盤と杭の波動伝播と振動特性を応力とひずみから 耐力と振動数依存性のメカニズムを精査し、現象の物理的解釈を見出す。 ③ 動的ばねと耐力の各振動数依存性が構造物に及ぼす影響特性の検討: 模型実験及びFEMで得た動的ばねと耐力の特性をばね質点系モデルに組み込むことで、「振動数依存性」と「非弾性特性」が構造物の応答に及ぼすぞれぞれの影響を検討する。
|