本研究は,橋梁振動に起因する地盤振動によって周辺居住環境に生じる環境振動問題に関して,人間の心理的応答に基づく合理的な環境振動評価法を構築することを目的としている.建物の共振に起因する環境振動は,交通状況に応じた過渡的な水平方向の振動が支配的となる場合や,それに鉛直方向の振動が複合する場合が多い.また,同時に発生する騒音が振動の評価に影響する可能性も指摘されている.本研究では,実験室内の装置を利用した実験を実施し,振動と騒音の物理量に基づき心理的応答を適切に評価できる方法を検討する.得られた成果は,合理的な環境振動の評価に基づく問題の効率的解決や,現行の環境振動評価法の改定に資する知見となることが期待できる. 本年度は,新型コロナ感染症まん延の影響で過年度より積み残しとなった【課題4】水平-鉛直振動同時暴露の評価,【課題5】振動・騒音同時暴露の評価について実験を継続して実施したほか,【課題6】包括的な環境振動評価法の構築に関する検討を行った. 【課題4】については,実際の居住環境を想定した水平-鉛直振動同時暴露の条件,および水平振動あるいは鉛直振動のみ暴露の条件に対する心理的応答の測定結果を蓄積した.その結果,水平振動と鉛直振動をそれぞれ単独で評価する現行の環境振動評価法では適切な評価が難しい水平-鉛直振動同時暴露の条件があることを示した. 【課題5】については,【課題4】と同様な実験的検討を鉛直振動と騒音の同時暴露について実施し,心理的応答の測定結果を蓄積した.その結果,振動と騒音の心理的応答が同等となる条件を示したほか,心理的応答への振動と騒音の複合的な影響の有無やその程度に関する知見を得た. 【課題6】については,【課題4】,【課題5】で得られた実験結果に基づき,水平-鉛直複合振動の評価に騒音の影響も考慮した評価方法について検討した結果を示した.
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