研究課題/領域番号 |
18H01524
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
中畑 和之 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (20380256)
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研究分担者 |
森 伸一郎 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 准教授 (10304643)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 閉口き裂 / 振動 / 超音波 / 波形ひずみ / 非線形音響 |
研究実績の概要 |
土木構造部材に発生するき裂は,無載荷状態では閉口している場合があり,目視検査でルート部を見落としたり,通常の超音波探傷試験等ではサイジングの精度が劣ることが問題となる.本研究では構造部材を振動させ,その状態で振動数とはオーダーの異なる周波数の超音波を送信する.このとき,き裂界面の接触・非接触によって超音波の波形がひずむことを利用して,き裂を検出・評価する技術の開発を目的とする.ここでは,大断面を有するコンクリート部材のき裂群と,鋼材に発生した局所的なき裂に対して,この超音波の波形ひずみを利用したアプローチを試行する.H30年度は,以下のような基礎検討を行った. (1)大断面を有する部材に対するアプローチ H30年度は,数mのスパンを有するコンクリート部材を透過する超音波を送信するための低周波超音波プローブの設計と製作を行った.波形のひずみによって高調波成分が発生することを見越して,周波数の異なるプローブの対を製作した.また,振動の発生と共に超音波の計測を始めるシステムの構築に着手し,基本的な計測ができるようにファンクションジェネレータ,パルサーレシーバを組み合わせたシステムを構築した. (2)局所的に発生したき裂に対するアプローチ ひび割れ発生が卓越する場所に対して,アレイプローブを用いて超音波を送信し,その散乱波に含まれる波形のひずみを用いて超音波映像化を行うためのシミュレーション技術を開発した.超音波の到達によって生じるき裂面のたたき合いモデルを導入しており,これによって生じる非線形成分を基にき裂の映像化シミュレーションを行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)大断面を有する部材に対するアプローチ H30年度は,部材を振動させたときに透過超音波を計測するためのシステム構築を行った.最大10秒程度の超音波波形を記録できるように設計した.このとき,大電圧で連続波を送信すると,探触子の性能が低下したり,短絡の恐れもあるため,バースト波を定期的に送信するように設計している.当初の予定では,鉄筋コンクリート桁のモックアップを作成する予定であったが,その場合はき裂が多数発生するため,複数のき裂からの影響を受けることになる.そこで,H30年度は鋼材に疲労き裂を1つ作成し,載荷試験によってき裂を徐々に開口させたときの超音波の波形ひずみについて調べた.超音波の透過波は,載荷に伴い,大きくひずみ,位相シフトを引き起こすことが分かった.非常に有用な結果であり,次年度も引き続き検証予定である.しかし,波形のひずみを周波数解析したところ,高調波成分はほとんど含まないことが確認され,この理由についても継続して検証する予定である. (2)局所的に発生したき裂に対するアプローチ アレイ探触子を用いた全波形サンプリング処理(FSAP)方式を,閉じたき裂の映像化に適用した.従来のFSAP方式で用いている方法,即ち,単素子励起では,閉じたき裂を開口できる振幅強度で超音波を送信するのは困難な場合が多い.そこで,H30年度は,素子の同時励振で発生した入射波を用いてき裂の開閉口を誘起することを想定し,非線形現象を利用した超音波イメージングのシミュレーションを行った.この結果,大振幅を送信することで,き裂面のたたき合いを誘発し,発生した高調波によって閉じたき裂の映像化が可能であることが分かった.シミュレーションでは,き裂面のたたき合いモデルを導入しているが,実際にこれが生じるには相当の大振幅波を入力する必要があり,実験的検証はH31年度に行う予定である.
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今後の研究の推進方策 |
1)大断面を有する部材に対するアプローチ H30年度に,部材を振動させたときに透過超音波を計測するためのシステム構築を行ったので,H31年度はこれを用いて波形ひずみを検証する.静的載荷の場合には,波形のひずみには高調波成分はほとんど含まないことが確認された.H31年度は小型加振機を用いて定常的にたわみ振動を誘発したときの波形を計測し,波形ひずみに含まれる高調波成分について検討を行う.また,コンクリート桁のモックアップを製作し,複数のき裂による波形ひずみの計測を行う. (2)局所的に発生したき裂に対するアプローチ H30年度はシミュレーションによって,き裂のイメージングの検証を行った.H31年度はアレイ探触子を用いて計測実験を行い,閉じたき裂のイメージングを試行する.き裂からの高調波成分を効率的に計測するために,周波数の異なる素子を交互に配置した特殊な超音波アレイプローブを作製する.また,き裂からの散乱波に含まれる非線形成分について検討を行う際に重要になるのは,装置系の非線形性を取り除くことである.ここでは,現有の電子スキャン装置の基本性能の調査項目として,素子を同時励振した時の電圧の増加に伴う非線形成分の発生について定量的に調べる.
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