研究課題/領域番号 |
18H01531
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
古関 潤一 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (30272511)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 地盤工学 / 液状化 / 振動台実験 / 室内土質試験 |
研究実績の概要 |
2011年の東北地方太平洋沖地震で被災した市街地の液状化対策を検討する際に、「年代効果」を経験的に考慮した液状化強度の評価が行われたが、地震履歴等による土粒子構造の変化と経時的なセメンテーションの発現に起因すると考えられている「年代効果」の詳細は、未解明な点が多い。 そこで本研究では、重要構造物の支持地盤となる密な砂地盤に及ぼす地震履歴の影響に着目し、多数の地震履歴を経て密になっていく砂地盤の液状化強度がどこまで増加し得るか、また、このような密な砂地盤とその上部構造物が巨大な地震動を受けたときにどのように挙動するかを明らかにするために、系統的な振動台実験と室内土質試験を実施して結果の分析を行う。本年度は以下の2項目の研究を実施した。 1) 水平飽和砂地盤模型の振動台実験 高さ0.5m,長さ2.6m,奥行き0.4mの水平飽和砂地盤模型を硅砂7号で作成して水平加振実験を行い、多数の加振履歴等を経て相対密度が80%程度以上に高まった場合と、最初から高い相対密度で地盤を作成した場合の液状化特性を計測し、これらが異なることを明らかにした。 2)飽和砂の中空ねじり試験 振動台実験と同じ硅砂7号を用いて高さ30cm,外径20cm,内径12cmの中空円筒供試体を作成し、飽和・圧密後に初期せん断ゼロの条件下で非排水繰返しねじりせん断試験を行う。多数の繰返し載荷履歴を経て相対密度が80%程度以上に高まった場合と、最初から高い相対密度で供試体を作成した場合の液状化特性と液状化後の再圧密特性を計測し、これらが異なることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
振動台実験と室内土質試験を同じ砂で系統的に実施することで、多数の加振・液状化履歴がその後の液状化特性に及ぼす影響を、単に液状化強度だけでなく、当初の計画どおりに応力ひずみ関係や有効応力経路の直接比較により定量的に評価することに成功している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの関連研究では、「密度が変化しない範囲で微小な多数回繰返し載荷履歴を与えた場合の液状化特性の変化」が注目されてきたが、本研究ではあえて密度変化を許容した載荷履歴を与え、密な状態になってからの液状化特性に着目している点に学術的な独自性がある。また、振動台実験では必要に応じ極めて多数の加振履歴を与える点に実験手法の独創性がある。これらの独自性・独創性を活用しながら、今後は以下の項目についても研究を実施する予定である。 3) 高さ0.5m,長さ2.6m,奥行き0.4mの水平飽和砂地盤模型を硅砂7号で作成して水平加振実験を行い、多数の加振履歴等を経て相対密度が80%程度以上に高まった場合と、最初から高い相対密度で地盤を作成した場合の2通りについて、これらの地盤模型上に構造物模型を設置して水平加振実験を行い、構造物と地盤の応答特性と、加振中と加振後の構造物の沈下挙動および周辺地盤の変形挙動を計測し比較する。 4) 振動台実験と同じ硅砂7号を用いて高さ30cm,外径20cm,内径12cmの中空円筒供試体を作成し、飽和・圧密後に初期せん断を作用させた条件下で非排水繰返しねじりせん断試験を行う。多数の繰返し載荷履歴を経て相対密度が80%程度以上に高まった場合と、最初から高い相対密度で供試体を作成した場合の液状化特性と液状化後の再圧密特性を計測し比較する。これまでに実施した初期せん断がない場合の試験結果とも比較する。 5) 上記の中空ねじり試験よりも供試体を小さくした試験(供試体高さ20cm,外径10cm,内径6cm)も並行して実施し、多数の繰返し載荷履歴の与え方を変えた場合の影響を詳細に把握する。
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