研究課題
2011年の東北地方太平洋沖地震で被災した市街地の液状化対策を検討する際に、「年代効果」を経験的に考慮した液状化強度の評価が行われたが、地震履歴等による土粒子構造の変化と経時的なセメンテーションの発現に起因すると考えられている「年代効果」の詳細は、未解明な点が多い。そこで本研究では、重要構造物の支持地盤となる密な砂地盤に及ぼす地震履歴の影響に着目し、多数の地震履歴を経て密になっていく砂地盤の液状化強度がどこまで増加し得るか、また、このような密な砂地盤とその上部構造物が巨大な地震動を受けたときにどのように挙動するかを明らかにするために、系統的な振動台実験と室内土質試験を実施して結果の分析を行う。2年目である本年度は以下の2項目の研究を実施した。1) 水平飽和砂地盤および構造物模型の振動台実験高さ0.5m,長さ2.6m,奥行き0.4mの水平飽和砂地盤模型を硅砂7号で作成して水平加振実験を行い、多数の加振履歴等を経て相対密度が80%程度以上に高まった場合と、最初から高い相対密度で地盤を作成した場合の2通りについて、これらの地盤模型上に構造物模型を設置して水平加振実験を行い、構造物と地盤の応答特性と、加振中と加振後の構造物の沈下挙動および周辺地盤の変形挙動を計測し、これらが異なることを明らかにした。2)飽和砂の中空ねじり試験振動台実験と同じ硅砂7号を用いて高さ30cm,外径20cm,内径12cmの中空円筒供試体を作成し、飽和・圧密後に初期せん断ゼロの条件下で非排水繰返しねじりせん断した。様々な条件下での多数の載荷履歴を経て相対密度が80%程度以上に高まった場合の液状化特性は、載荷履歴によって大きく異なることを明らかにした。さらに、これらの中空ねじり試験よりも供試体を小さくした試験(供試体高さ20cm,外径10cm,内径6cm)も並行して実施し、載荷履歴の影響を詳細に把握した。
2: おおむね順調に進展している
当初は初期せん断を与えた中空ねじり試験を実施する予定であったが、その予備検討段階において、履歴条件によって液状化特性が著しくことなることが判明したため、実験条件を変えて試験を実施した。この点以外では、研究は順調に進展している。
これまでの関連研究では、「密度が変化しない範囲で微小な多数回繰返し載荷履歴を与えた場合の液状化特性の変化」が注目されてきたが、本研究ではあえて密度変化を許容した載荷履歴を与え、密な状態になってからの液状化特性に着目している点に学術的な独自性がある。また、振動台実験では必要に応じ極めて多数の履歴を与える点に実験手法の独創性がある。これらの独自性・独創性を活用しながら、最終年度にはこれまでの検討ではカバーできていない条件下での振動台実験と中空ねじり試験を追加実施し、検討成果の総合的な取りまとめを行う予定である。
すべて 2019 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件) 備考 (2件)
Geomechanics for Energy and the Environment
巻: 22 ページ: -
doi.org/10.1016/j.gete.2019.100157
Soils and Foundations
巻: 59 (5) ページ: 1148-1159
doi.org/10.1016/j.sandf.2019.03.015
巻: 59 (6) ページ: 2024-2035
doi.org/10.1016/j.sandf.2019.11.001
http://geotle.t.u-tokyo.ac.jp/portfolio/study-of-pre-shake-effects-on-liquefaction-in-shake-table/
geotle.t.u-tokyo.ac.jp/portfolio/impact-of-the-repeated-liquefaction-on-superstructure/