研究課題/領域番号 |
18H01535
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研究機関 | 大同大学 |
研究代表者 |
棚橋 秀行 大同大学, 工学部, 教授 (00283234)
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研究分担者 |
菊本 統 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 准教授 (90508342)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 地盤汚染 / 非掘削浄化 / 油汚染 / 環境修復 |
研究実績の概要 |
製造工場等で使用される機械油のような高粘性で揮発しにくい油種に対する非掘削浄化はあまり進んでいない。これに対し,工場を稼働させたまま、界面活性剤を用いて機械油汚染地盤を非掘削浄化する方法を開発することが本研究の主眼である。浄化範囲を3つのエリアに分け,それぞれの浄化の際の課題に着目して実験を行なった。浄化範囲①:建物直下の油汚染の漏洩源であり,鉛直下方向へ油が浸透しているエリアである。油分量は多いが地中埋設物があり,その隙間に入り込んだ油を回収するのは難しく,課題A「地下埋設物による油分移動の阻害」が浄化の長期化を引き起こすこと,が懸念される浄化範囲である。浄化範囲②:浄化範囲①の周辺,汚染源近傍の比較的狭い範囲に油層が厚みをもって存在しているエリアである。これを乳化・移動させるには埋設されたストレーナー管より界面活性剤を圧入し,乳化油を真空圧で回収する方法が適している。しかしこの方法では,課題Bとして,「終盤になると残留油に接触するよりも,素通りするだけの界面活性剤の量が膨大になり効率が低下すること」,が問題になる。浄化範囲③:浄化範囲②のさらに外側の広い範囲に薄く油膜が広がっているエリアである。ここでは注入井戸・揚水井戸の水頭差(動水勾配)による浄化が主に行われるが、流下距離が長くなり、かつ圧力がかかりにくいため、課題C「界面活性剤の地盤間隙内での濃縮・停滞が発生しやすい」という点が問題となる。2019年度の研究実績はこの課題ABCそれぞれの解決に大きく前進したものである。詳細は「8.現在までの進捗状況」にてまとめる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
浄化範囲①の課題A「地下埋設物による油分移動の阻害」について:地下埋設物を再現した実験装置を作成した。この装置により、界面活性剤の流向・流速、発泡効果の有無などのケースを行ない、実験結果を多角的に比較した。これにより、埋設管の間を流れる界面活性剤が低流速(低浸透圧)であっても、よどみ領域を作らずに汚染油をムラなく乳化・輸送するうえで、間隙内二液反応発泡法が有効であることが確認できた。 浄化範囲②の課題B「終盤になると残留油に接触するよりも,素通りするだけの界面活性剤の量が膨大になり効率が低下すること」について:新たに製作した土槽(幅190cm×高さ140cm×奥行き5cm)を用いた室内実験を実施した。その結果、昨年までの実験で見出した「界面活性剤を油層の上から押さえつける流れ成分と、横からの流れ成分の併用」で行ったケースのすべてを通じ、安定した浄化成果が得られることが確認できた。 浄化範囲③の課題C「界面活性剤の地盤間隙内での濃縮・停滞が発生しやすい」について:HLB値の異なる界面活性剤を配合するという新しい視点での油汚染地盤の浄化実験を行なった。その結果、汚染油の乳化性能を保ちつつ、濃縮・停滞を起こさずに動水勾配流で浄化完了することに成功した。HLB値の小さい(親油性の高い)親油性の界面活性剤がまず汚染油の乳化を行い、これをHLB値の大きい(親水性の高い)界面活性剤がすすぐように輸送することで、この問題をクリアすることができた。今年度は界面活性剤の配合比に加え、特に送液の手順・配置について有益な知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
浄化範囲①の課題A「地下埋設物による油分移動の阻害」について:2019年度に引き続き、地下埋設物を再現した実験装置を用いて、埋設管間の油分を移動させるために間隙内二液反応発泡法を最適化することに取り組む。具体的には発泡のタイミングや添加材による気泡の持続性、界面活性剤のみの浸透との併用などについて検討する。 浄化範囲②の課題B「終盤になると残留油に接触するよりも,素通りするだけの界面活性剤の量が膨大になり効率が低下すること」について:これまでに見出した「界面活性剤を油層の上から押さえつける流れ成分と、横からの流れ成分の併用」の汎用性に関する実験に取り組む。具体的には、汚染油の種類や模擬地盤を構成する試料土を変えた場合の汎用性について検討する。 浄化範囲③の課題C「界面活性剤の地盤間隙内での濃縮・停滞が発生しやすい」について:これまでに得られたHLB値の異なる界面活性剤を配合比のノウハウや送液の手順・配置についての知見をもとに、汎用性に関する実験に取り組む。具体的には、汚染油の種類や模擬地盤を構成する試料土を変えた場合の浄化効率について検討する。 その他、界面活性剤以外の流体を用いた油の輸送方法についても積極的に実験を行なってゆく予定である。
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