工場を稼働させたまま、界面活性剤を用いて機械油汚染地盤を非掘削浄化する方法を開発することが本研究の主眼である。浄化範囲を3つのエリア①②③に分け,それぞれの浄化の際の課題に着目して研究を行なった結果得られた主な成果を、以下にまとめる。 浄化範囲①:建物直下の油汚染の漏洩源で地中埋設物があり,その隙間に入り込んだ油を回収するのは難しい。検討の結果、間隙内二液反応発泡における二酸化炭素量が同じであれば、細かい時間ピッチで少量ずつ、多ポイントで発生させる送液パターンのほうがムラを残さず浄化できることを見出した。また、食用油の送液を追加した実験では、ほとんど油が残留しておらず、最も浄化効果が高いことがわかった。 浄化範囲②:浄化範囲①の周辺,汚染源近傍の比較的狭い範囲に油層が厚みをもって存在しているエリアである。埋設管より界面活性剤を圧入し,乳化油を真空圧で回収する方法が適している。しかしこの方法では,終盤になると残留油に接触するよりも,素通りするだけの界面活性剤の量が膨大になり効率が低下することが問題になる。検討の結果、「界面活性剤を油層の上から押さえつける流れ成分と、横からの流れ成分の併用」で行うことで安定した浄化成果が得られた。ただし実際の現場を想定すると、浄化プロセスが煩雑であることが今後の課題であると思われた。 浄化範囲③:浄化範囲②のさらに外側の広い範囲に薄く油膜が広がっているエリアである。ここでは注入井戸・揚水井戸の水頭差(動水勾配)による浄化が主に行われるが、界面活性剤の地盤間隙内での濃縮・停滞が発生しやすいという点が問題となる。検討の結果、HLB値の異なる2種類の界面活性剤を配合するという新しい視点で浄化実験を行なった結果、乳化性能を保ちつつ、濃縮・停滞を起こさずに動水勾配流で浄化完了することに成功した。
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