研究課題/領域番号 |
18H01537
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
猿渡 亜由未 北海道大学, 工学研究院, 助教 (00563876)
|
研究分担者 |
宮武 誠 函館工業高等専門学校, 社会基盤工学科, 准教授 (20435382)
ヘンリー マイケル・ワード 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (80586371)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 波浪 / 潮流 / エネルギー / 海上気象 |
研究実績の概要 |
当初申請時に計画した4つの要素研究を同時進行で行った. 潮流発電装置の設置予定地となっている津軽海峡では,潮流エネルギーの強さが季節的に変化するとともに,海中が成層化する夏季には低気圧の通過等に伴い内部波が発達しエネルギーポテンシャルに影響を与えることを現地観測から確認している.本年度研究では昨年度に引き続き台風通過に伴う海洋内部の応答を調べるための数値実験を行う準備を進めた.計算モデルの条件パラメータの調整を行い,低気圧通過に伴う内部振動の発達と水温塩分の鉛直混合を観測した結果を矛盾なく再現することができた. 潮流を集中させ流れエネルギーを増幅させるための潮流ディフューザの内外における流れ場の特徴を,小型模型を用いた室内実験並びに三次元数値計算を行うことにより明らかにした.ディフューザ内の流速は有意に増速されるとともに,その背後には三次元的な渦が間欠的に放出される.この渦は装置の振動の原因となるため強度や放出周波数などについて今後より詳細に検討する必要がある. 波浪の屈折さにより波エネルギーを集中させることを想定し,円錐型構造物を三次元水槽内に設置した時の周囲の波浪伝播の特徴を調べた.構造物上部からの撮影画像から汀線を検出することにより海岸線に捕捉された波浪の伝播過程を調べるとともに,円周方向の波浪エネルギー分布を求めた. 発電施設稼働中に将来的に生じ得る最大規模の暴風波浪外力を正当に評価するために,大気海洋間の熱輸送現象について,海上現地観測により得られた結果に基づき検討を行った.強い台風が通過する際,激しい鉛直混合により高濃度の気泡が水面下に混入し,20m程度の深さまで到達することが確認された.この気泡群が瞬間的に輸送する熱フラックスは非常に大きくまた海中に新たな気液界面を生じさせ海中で直接的な熱交換を行うため効率的な熱の鉛直輸送に寄与している可能性があることを明らかにした.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,波力エネルギーデバイス並びに潮流海流エネルギーデバイスをより効率的に利用するための基礎研究を進めることができた.波力デバイスについては,波浪実験を行うための中型平面水槽内に造波装置を新設し,側壁からの波の反射等の影響を低減し,ある程度の面積をテストセクションとして確保できるよう水槽及び造波装置のセットアップの調整を行った.また同時に研究グループで既に保有していた小型平面水槽内において小型円錐模型を用いた中型水槽へも適用可能な画像実験手法の確立を行った.潮流海流デバイスに関しては,小型ディフューザ模型を用いた開水路内PIV実験を行った.流れエネルギーの増幅を最も効率的に行えるディフューザ形状を決定することができた. また,将来気候における海象災害の規模を推定するためには現行の気象モデルの高精度化が必要不可欠であるが,そのための基礎研究を進めることができた.近年,大気海洋間の熱,湿度,運動量輸送等の現象に気泡や飛沫などの微細な要素が無視できない影響を与えていることが指摘されている.本年の研究では海上現地観測により得られた大規模台風通過時の気象海象データに基づき,荒天時の海中への気泡混入量の推定を行うと共に,それらが大気海洋熱輸送現象に与える影響を見積もるなどして,今後の気象モデルの高精度化に貢献できる知見を提供することができた. 得られた研究成果は国内の学術会議等において発表し,各方面の専門家との意見交換を通して本研究を更に進展させるための手がかりを得ることができた.
|
今後の研究の推進方策 |
潮流海流エネルギーデバイスについては引き続き開発を進めていく.来年度はディフューザ内部にプロペラを有する回転部を設置することにより,より発電タービンに近づけた形で水理実験を行うと共に,それに対応する数値実験を行うことによりタービン周辺の流れ場の特徴についてより詳細に調査していく.また,潮流海流場の発電のための利用ポテンシャルに影響を与える夏季の内部波の発達について,実現象の再現性を確保するための計算法の調整を行うと共に,数値実験を進めていく. 波力デバイスについては今年度,造波装置を新設した中型平面水槽内において一様な波を発生させるため,水槽内消波装置の設置,調整を行った.また同時に小型模型実験を用いた波浪の測定方法のセットアップを行った.今後は当中型平面水槽の最終的な調整を終了すると共に,中型模型実験を実施していく. 更に荒天時の大気海洋間熱輸送現象については,水面を介した熱輸送現象に関する画像実験を行うことにより,熱輸送過程についてより詳細に調べていく.また現在行っている海上現地観測を継続し,より多くの荒天時データの蓄積を図る.
|