研究課題/領域番号 |
18H01540
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
平林 由希子 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (60377588)
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研究分担者 |
鼎 信次郎 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (20313108)
山崎 大 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (70736040)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 洪水 / 地球温暖化 / 大規模アンサンブル実験 |
研究実績の概要 |
全球河川データセンター(GRDC)より最新の河川流量データを取得し、観測所の緯度経度情報から、対応する河川氾濫モデルの河道網の格子番号を設定する作業を行った。緯度経度ならびに観測所の流域面積とモデル河道網の上流の流域面積が最も近くなる格子を選出した後に、GIS上で観測所が河道網の適切な位置(本流、支流、合流部、貯水池の下流など)に位置しているかを目視で確認する作業を行い、最終的に全球107地点の河川流量データを検証データとして整備した。 また、高解像度の衛星水面マップから河川氾濫面積を抽出するため、超高解像度・高精度の標高データMERIT-DEMから、河道沿いの氾濫域を定義するマップを開発した。このマップをグローバルな数百万枚の衛星画像データから水面の増減傾向を取得するAqua Monitorデータと重ねることにより、過去の河川氾濫面積の増減傾向を抽出する方法を開発した。また、当初の研究計画ではAqua Monitorという高い空間解像度はあるが時間方向の解像度が比較的低い(同一地点の観測は16日周期)衛星画像を用いて過去の流量観測が得られない地域の洪水の増減傾向を検出する予定であった。しかし、この衛星画像データの空間解像度を補填する新しい衛星画像プロダクトを入手することができたことから、開発した手法の妥当性を適切に評価することが可能となった。 全球貯水池・湖沼データベース(GRanD)を入手し、河川の任意の上流域の合計の貯水池およびその建設時期情報の整備を行った。これにより、観測データや衛星画像から検出する洪水の増減傾向に対する人為的影響を解析することが可能となる。 気象庁気象研究所からMRI-AGCMの大規模アンサンブル気候実験を入手し、河川流出データを河川氾濫モデルに入力するためのデータ変換とエラーチェックを行った。また、河川氾濫シミュレーションのテスト実験を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の実施に必要な入力データや検証データの収集および整備を順調に進めることができた。また、研究代表者の研究機関異動に伴う、計算機やハードディスク等の研究環境の移設および設定も完了し、大規模アンサンブル実験の予備実験まで完了することができた。また、衛星画像と河川氾濫マップを重ねて過去の洪水の増減を検出する手法の開発に成功した。衛星画像による洪水氾濫の検出などについて、成果を査読付き論文として発表しており、成果の発表についても着実に進めている。
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今後の研究の推進方策 |
各種データの収集・整備が順調に行われ、大規模アンサンブル河川氾濫シミュレーションの予備実験も予定通り完了した。今後は本実験の実施を行い、過去再現実験と非温暖化実験を比較することで温暖化による過去の洪水の発生頻度の変化を解析する、イベントアトリビューション解析を実施する。また、地域的な偏在性の大きい観測データや、気象観測データやモデルのエラー、人間活動の影響による長期流量シミュレーションデータの問題を補うための、グローバルな衛星画像等のデータの解析による過去の洪水の変化傾向解析を進める。それに伴う研究データの格納に必要なデータサーバー等の調達も適切に進める必要がある。
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