研究課題/領域番号 |
18H01541
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
下園 武範 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (70452042)
|
研究分担者 |
山中 悠資 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (60815108)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 津波 / 高潮 / 浸水 / モデル |
研究実績の概要 |
広域の沿岸低平地群の浸水被害を一括して効率的に評価できる浸水予測手法の構築に向けて,前年度に構築した基本モデルの検証・改良を行った.モデルは,海岸低平地を小領域のネットワークとして表現し,長波方程式に基づいて小領域間の質量・運動量交換を解いて浸水過程を再現する.このモデルでは,海岸地形を標高によって小領域に分割・整理した地形データベースを参照し,対象地域を小領域ネットワークとして表現した上で,海域の水位を境界条件として浸水計算を行うため,効果的な領域分割が精度および効率面で鍵となる.いくつかの理想化された地形条件の下で,非線形長波モデルに基づく詳細な浸水モデルによる結果との比較を通して,精度と計算コストの面から効果的な領域分割法を考案した.また,効率的かつ安定的にネットワーク計算を行うためのアルゴリズムについても改良を行った.様々な地形条件で精度検証を行った結果,ネットワーク型浸水モデルは従来の簡易浸水計算法では再現できなかった遡上や窪地や微高地などの存在する地形での浸水過程の再現も可能であることが確認できた.2011年東北地方太平洋沖地震津波のケースにモデルを適用した結果, 非線形長波方程式による浸水計算結果と比較して,より少ない計算単位数で同程度の精度で陸域の浸水を評価できることが確認された.また,地形情報データベースに人口メッシュデータを統合し,浸水計算結果から被害情報を算出できるようにモデルおよびデータベースの拡張を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題の中心であるネットワーク型浸水モデルの開発について,幅広い条件で基本モデルの検証・改良を行い,過去の事例に適用するなど大きくモデルを進展させることができた.堤防越流の評価手法の検討については当初の計画通りに進まなかった面があるものの,全体としては順調に進展していると言える.
|
今後の研究の推進方策 |
外洋からの津波伝播や高潮発達を含めた浸水予測手法全体の精度・計算効率は,海域モデルと陸域浸水モデルの接続法に大きく依存するため,堤防効果を含めた両者の効果的な接続手法について検討を行う必要がある.また,領域分割法や浸水計算手法についても改善の余地が残されており,より幅広い条件での検証を行って改良を行う.
|