研究課題/領域番号 |
18H01548
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
竹原 幸生 近畿大学, 理工学部, 教授 (50216933)
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研究分担者 |
中北 和之 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 主幹研究開発員 (50358595)
江藤 剛治 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 教授 (20088412)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 超高速カメラ / 寿命計測 / 圧力計測 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、曲面上の風圧の時空間的な変動をLifetime-PSP(Pressure Sensitive Paint)法で計測する技術の実用化である.以下の3グループで協働して研究開発を進めた.(1) 近畿大学グループ(代表:竹原):Lifetime PSP法による波面上の圧力変動計測を可能にする.(2)立命館大学グループ(分担:江藤):Lifetime PSP法等に必要な蛍光や燐光の減衰特性を可視化計測するための専用特殊ビデオカメラを開発する.(3) JAXAグループ(分担:中北):Lifetime PSP法の検討をさらに進め,高精度化を目指すと共に,振動翼上の圧力計測に必要な周辺技術を整備する.特殊高速ビデオカメラとLifetime PSP法を組み合わせ振動翼上の圧力分布の計測技術を確立する.
(1)近畿大学グループ:昨年度に引き続き,波面上の圧力変動のPSP計測を行っている. (2) 立命館大学グループ:最初に昨年の報告を修正する.昨年の報告では「既に開発したテストイメージセンサ素子は、32×32画素、速度250万枚/秒、連続撮影枚数1,220枚で」と書いたが, 目標速度は1億枚/秒,実現した速度2,500万枚/秒である.また,昨年度の評価では非常に大きな暗電流が生じた.テストチップをすぐに作り変えることはできないのでCCDの駆動電圧を下げることで,暗電流の低下を試みた.転送電荷容量も1桁下がるので,テストカメラの読み出し回路の雑音を下げた.またビニングを行うことでSN比を上げた. (3) JAXAグループ:Lifetime PSPの圧力定量性の改善を進めた.弾性変形によって大変形を起こす翼模型を対象に,フラッタ発生時の圧力変動のLifetime PSPによる計測研究を継続し,定量的な圧力計測が可能となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 近畿大学グループ:波面上の圧力変動のPSP計測を行っている.立命館大学で修正したカメラを用いて計測の再検討を行っている. (2) 立命館大学グループ:Lifetime PSP法で蛍光・燐光等の時間変化を計測するためのビデオカメラ用特殊イメージセンサ(裏面照射マルチ電荷収集ゲート画像信号積算素子)の修正を続けている.イメージセンサの修正設計を完了した.基本的な修正は,大きな暗電流の原因であった局所的な大きな電界が生じる転送路部分の修正である.以前のセンサは連続1,220枚撮影できたが画素サイズが70umと非常に大きかった.画素サイズを50 umに縮小したため,連続撮影枚数は560枚となった.ただしテストセンサを作り変えるには多額の費用を必要とするので,本年度は読み出し雑音の原因を明らかにし,駆動回路の修正を行った.またビニングを導入してSN比を上げた. (3) JAXAグループ:弾性変形によって大変形を起こすフラッタ発生時の翼模型を対象に,Lifetime PSPによる瞬時圧力分布の計測を継続した.昨年度はLifetime PSPデータ処理により,定性的な瞬時圧力分布を算出し,各高速度カメラ画像を連続させてフラッタ発生時の圧力挙動を把握することができた.しかし,PSP塗料特性の差異による場所ごとの寿命分布や,試験模型と較正サンプル間の寿命特性差により十分な定量性を得ることはできなかった.今年度は塗料特性分布を解消するために無風時のLifetime PSPデータを組み合わせるratio-of-ratiosデータ処理を導入し,風洞試験時のon-site PSP感度特性と組み合わせて定量性を向上させた.しかし,フラッタ発生による翼の大振動時には参照用圧力センサとの定量性圧力差異が残っている.ドイツと日本の2国間のPSP技術に関するワークショップにおいてこれらの成果を発表した.
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今後の研究の推進方策 |
来年度は以下のように研究組織の変更がある。特殊イメージセンサの開発を担当してきた立命館大学客員教授の江藤教授が,実質的に大阪大学に移籍する(立命館大学は1年間兼任).これまで江藤教授と共に立命館大学でイメージセンサグルー プの設計をしてきた博士課程の学生も、立命館大学と大阪大学の協定に基づいて大阪大学で指導を受けることになる. (1) 近畿大学グループ:PSPによる波面の圧力分布測定技術の開発を続ける. (2) 大阪大学グループ:特殊イメージセンサの駆動回路の乗った基盤を作り変える.CCDを駆動するための一定電圧を作る定電圧回路をインバータ型から変える.この修正とビニング効果によりSN比を上げる. (3) JAXAグループ:通風中のPSPデータだけでLifetime PSPデータ処理により,定量的にフラッタ発生時の圧力挙動を把握することができるようになった. しかし,計測としての過酷条件である大振動時には定量的圧力計測誤差が残っており技術開発をさらに進める必要がある.大振動時の圧力差異発生の原因の追求と定量性改善のためのデータ処理技術改良を進める.
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