令和2年度は、石炭灰添加による水分保持能の向上をフィールド実験によって検証する予定であったが、コロナ禍によりフィールド実験は断念せざるを得なかった。石炭灰由来の凝集効果により、土壌の団粒構造特性がフィールドレベルでどの程度影響を受け、水分保持能へ反映されるか検証することを予定していたが、上記の原因により、実験室レベルの土壌ポットを用いた検証実験を代替として実施した。ただし、前年度までの予備試験において、特に40℃の室温条件では恒温槽の空間的制限性から空気の対流状況に位置的な差異が生じ、それが水分の蒸発速度に対して大きな影響を与えていることを見出している。これが本研究においてフィールド実験を志向した理由の一つであったが、この問題に対して実験手法の改善では解決するに至らず、別アプローチによって検証することとした。 土壌の団粒構造特性に着目すると上記の実験手法的制約が不可避となるため、石炭灰をアルカリ処理してジオポリマー化し、さらに多孔性構造を形成することで、団粒構造に似た水分保持場を石炭灰のみで形成し、水分保持能の向上を図るアプローチである。常温常圧条件かつ極めてシンプルな操作のみで多孔性ジオポリマーを形成する条件を探索し、多孔性ジオポリマーの創成に成功した。土壌の団粒構造特性に疑似させるため、細孔径はマイクロメートルからミリメートルレベルが主となることが求められたが、物理的な拡販操作に発泡作用を組み合わせることで簡易に細孔構造を形成できることを見出した。ただし、作成した多孔性ジオポリマーの水分保持能を統計的に評価するまでには至っておらず、今後の継続的研究が必要である。
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