研究課題/領域番号 |
18H01569
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山敷 庸亮 京都大学, 総合生存学館, 教授 (20335201)
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研究分担者 |
辰己 賢一 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40505781)
石川 可奈子 滋賀県琵琶湖環境科学研究センター, 総合解析部門, 専門研究員 (80393180)
須崎 純一 京都大学, 工学研究科, 准教授 (90327221)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | GCOM-C / SAV / 湖 / リモートセンシング |
研究実績の概要 |
2018年度は、琵琶湖における沈水植物調査、アメリカにおける調査(タホ湖および周辺)、沿岸域における本手法の応用にあたる沈水植物の調査(田辺湾)を行なった。琵琶湖における調査においては、2018年度は非常に沈水植物が少なく、代わりに植物プランクトンが卓越している状況であった。そのため、予定していた沈水植物関連のデータの取得は十分にできなかったが、ちょうど競合にあたる植物プランクトンの空間分布と、それぞれの純粋コロニーの反射率の測定を実施した。結果、緑藻・珪藻・藍藻類それぞれの反射率の差異は、GCOM-CのSGLIにおける可視光・近赤外領域の明確な差異として確認可能であることがわかった。アメリカ・タホ湖においては反射率測定を行なったが、湖の透明度は非常に高いが、沈水植物の繁茂状況が不十分であり、一部地域を除いて適切でないことがわかった。 また、湖全般のリモートセンシング調査結果を開示する場合、冬季の氷結に関するデータが不十分であったため、北海道の氷結水域(大沼および周辺)での氷結表面での反射率測定を行なった。結果、氷結湖における反射率の差異が、可視光領域に明確に現れることがわかり、特にGCOM-CのSGLIで判別するのに適したスペクトル特性が把握できた。 また、地球全体の湖領域における衛星画像切り出しのアルゴリズムをMODISを題材に作成し、現在GCOM-Cデータを利用した適用を準備している。また、琵琶湖およびインドネシアの湖に対して、クロロフィルa濃度のリモートセンシングデータによる推定と結果の公開を開始した。これらを広げ、各国の出来るだけ多地域の淡水域データの同時公開を行なってゆく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定した調査として、琵琶湖における調査は実施でき、タホ湖については、簡単な調査概要は整った。しかしながら、ブラジルの調査は日程が合わず実施できなかった。琵琶湖における沈水植物調査はしかしながら、2018年夏は繁茂状況が非常に悪く、競合している植物プランクトン濃度が非常に高かった。時期を変えてみても同じであったため、2018年度は沈水植物については今までの調査の継続をやったが、主な研究対象を、異なる植物プランクトンの分別が可能かどうかについて、現地調査と、直接育成した純粋株の反射率を測定することにより、可視光線および近赤外線領域のスペクトル分布がどのようなものであるかを把握し、まずはこれらの分布を確認することとした。また、湖を長期間観測する上で、特に表面の反射特性が著しく異なる氷結現象にも鳥目し、北海道の氷結湖における反射率測定も行なった。これにより、年間を通しての湖の状況把握の準備を行なった。また、琵琶湖南湖という限定的水域のみを対象とした調査では、2018年のように繁茂状況が不十分である場合、データ取得不能となるリスクがあり、そのため、白浜および由良川河口部での調査を行なった。それぞれサンゴ、海藻類を対象としたものであったが、これらもデータとしては不十分であり、2019年の調査では、これらのデータを充実させるように調査を戦略的に行う必要がある。また、従前からの課題であるが、空間解像度が低くスペクトル解像度が高いGCOM-Cと、空間解像度は高いが観測頻度とスペクトル解像度が低い衛星画像を融合させるアルゴリズムの必要性が高い。これらに留意して次年度以降成果が残るように実施してゆく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度さらに、琵琶湖における共同観測を実施する。2018年度は沈水植物SAVが少なかったため、それまでの調査(2016年度まで)に比較して新しいデータを確保することはできなかった。2019年度の繁茂状況を把握しながら、日程調整を行い、最も適切な形での観測を実施する。同時に、湖だけではなく、沿岸域での沈水植物調査を引き続き行う。具体的には、田辺湾および、舞鶴湾である。若狭湾の他の地域での調査も実施する。場合によっては西表島周辺部でも行う。舞鶴湾においては、藻場の状況把握に応用できるかを検討する。そのための潜水設備を2018年度末に揃え、実際に琵琶湖においてテストを行なったが、本設備を利用して2019年度前半と後半に舞鶴湾における調査を実施し、同じ技術が藻場繁殖状況の判別に応用できるかを確認する。田辺湾においては、サンゴ礁(現在減少している)の分布調査に応用できるかを検討する。海外調査サイトについて、昨年度計画したカリフォルニア州のタホ湖においては昨年度事前調査ができたが、ブラジルに対しては渡航ができなかったため、今年度実施できるか検討する。タホ湖においては、湖の透明度が高すぎるため、底質分布の把握には良いが、貧栄養のため沈水植物自体の繁茂状況が不十分である。そのような状況も考慮にいれながら、夏の調査を計画する。また、GCOM-Cのアルゴリズムについては引き続きJAXAからのデータの解析を担当し、データ解析を行うが、特に高解像度衛星画像とのリンクに集中する。アウトリーチとして、夏にUNESCOと共同でのストックホルム水シンポジウムとのシンポジウムを行い、国際的な成果発表につなげる。
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