研究課題/領域番号 |
18H01571
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
鈴木 祐麻 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (00577489)
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研究分担者 |
隅本 倫徳 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (40414007)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 土壌汚染 / 重金属 / 金属酸化物 / アナターゼ |
研究実績の概要 |
2019年度は2018年度に対象としたカオリナイトと同様に代表的な粘土鉱物であるモンモリロナイトを対象として、モンモリロナイトのカドミウムの収着メカニズム、そしてアナターゼおよび溶出液に含まれるイオンが土壌からのカドミウムの溶出に与える影響を評価した。2019年度に得られた主な成果を下記にまとめる。
・カドミウムの吸着率が硝酸ナトリウム濃度に強く依存したpH6以下ではカドミウムの主な吸着メカニズムは≡X-へのイオン交換反応であり、pH7以上では≡SOHにおける内圏錯体の形成が主な収着メカニズムであると考えられた。この結果は、pH4-5の酸性雨に曝された場合、酸性雨に含まれるプロトンやナトリウムイオンなどのカチオンによりカドミウムが比較的容易に溶出することを示唆している。 ・3種類の溶出液を用いて人工汚染モンモリロナイトからのカドミウムの溶出に与える影響を評価した結果、pHが4-8の領域では顕著な違いはないことが分かった。また、次に雨水に含まれるイオンがモンモリロナイトからのカドミウムの溶出に与える影響を検討した結果、酸性雨に含まれるプロトンよりもナトリウムイオンなどのバックグラウンドイオンにより、イオン交換態としてモンモリロナイトに吸着しているカドミウムが容易に溶出することが分かった。 ・アナターゼ含有量が土壌からのカドミウムの溶出に与える影響を評価した結果、アナターゼが1 wt.%含まれる土壌からはアナターゼが含まれない土壌よりカドミウムの溶出量が少なく、約半分程度に抑えられることが分かった。つまり、同じ程度のカドミウム含有量を示す土壌であっても、アナターゼの含有量により溶出量は大きく異なり、アナターゼを多く含む土壌からはカドミウムの溶出が少ないことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
測定装置の故障など想定していなかったことがあったものの、計画していた研究内容を遂行して満足のいく知見を得ることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間の最終年度となる2020年度は、露出結晶面が異なるアナターゼ粒子を合成し、鉛・カドミウムを含む重金属を対象として合成したアナターゼ粒子を含む種々の鉱物への吸着・析出実験を行う予定である。また、分子モデリング・シミュレーションソフトMaterial Studioを用いた理論計算を行う。重金属類がアナターゼを含む種々の鉱物の表面に吸着する際のエネルギー準位等を理論的に計算し、アナターゼが他の鉱物より高い重金属親和性を示す理由を解明する。 本研究を成功させるための難関の一つである結晶面が露出したアナターゼの合成には、2019年度に予備実験を既に行っている。そして、現段階では粒径等がバラバラであり検討を続ける必要があるが、その第一ステップとして001面と101面が露出したアナターゼの合成に成功している。しかし、その他の結晶面が露出したアナターゼについてはまだ合成が成功していない。よって、必要に応じてアナターゼのみならず同じ二酸化チタンのルチル等も対象としながら研究を進める予定である。なお、本テーマについては、2020年度内に全て完了するとは想定しておらず、2020年度は結晶面が露出したアナターゼ粒子の合成方法の確立を最低限の目標とする。
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