研究課題/領域番号 |
18H01573
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
川越 保徳 熊本大学, くまもと水循環・減災研究教育センター, 教授 (00291211)
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研究分担者 |
惣田 訓 立命館大学, 理工学部, 教授 (30322176)
伊藤 紘晃 熊本大学, くまもと水循環・減災研究教育センター, 助教 (80637182)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Anammox / MBR / SNAD / 一槽型 / 部分亜硝酸化 / 脱窒 / 有機物 |
研究実績の概要 |
本申請研究では,一槽型の膜分離生物反応槽(MBR)による亜硝酸化-Anammox法に,共存有機物を電子供与体とする従属栄養脱窒を付与することで硝酸塩を処理する「一槽型MBRによる亜硝酸化-Anammox-従属栄養脱窒法(SNAD/MBR)」を確立することを目的としている。 一昨年度は,それまでのMBR(旧MBR)に加えてpHや温度,溶存酸素(DO)濃度などの運転条件の設定をより正確かつ容易に行える新規のMBR(新MBR)を用意し,新旧のMBRを同時に並列に運転して実験を進めた。結果,旧MBRでは窒素負荷速度(NLR)を0.5 kg/m3・dに設定して,窒素除去率(NRE)を80%以上で概ね安定して運転することが確認できたため,モデル有機物としてのグルコースを添加し,窒素除去率や細菌叢などへの影響に関して一定の知見が得られた。一方で,新MBRでは,立ち上げ時より槽内液の流出などのトラブルに見舞われ,立ち上げに行き詰った。 そこで昨年度は新MBRに用いるメンブレン(膜)の形状を変更して立ち上げを図り,一方の旧MBRについてもさらなる有機物の添加を検討することとしたが,その矢先にCovid-19の影響により,新旧MBRともに維持が困難になり,再び,窒素除去能が不安定になった。残念ながらその後も,復調が見え始めた時期に限ってCovid-19やリアクタトラブルなどで一槽型部分亜硝酸化-Anammox反応自体も安定維持できない状況が続いたまま現在に至っている。 以上,SNADとしての研究成果は乏しいものの,MBRに関する基礎的検討,および一槽型部分亜硝酸化-Anammox処理に関する検討を同時に進めており,MBRに用いるメンブレンの種類に関する知見やMBRを用いる一槽型処理,さらに逐次回分式リアクタ(SBR)による一槽型処理に関する知見が得られ,3編の英文論文にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
初年度である2018度は,MBRの窒素負荷を上げるべく検討したが,攪拌装置の故障などトラブルに見舞われAnammox細菌や部分亜硝酸化を担うアンモニア酸化細菌の増加が進まなかった。 そこで一昨年度は,それまでのMBR(旧MBR)に加えて新規のMBR(新MBR)を用意し,新旧のMBRを同時に並列に運転して実験を進めることとした。新規のMBRではpHや温度,溶存酸素(DO)濃度などの運転条件の設定をより正確かつ容易に行えるものを準備した。その結果,旧MBRでは,窒素負荷速度(NLR)を0.5 kg/m3・dに設定して,窒素除去率(NRE)を80%以上で概ね安定して運転することが確認できたため,モデル有機物として,まずは,既往文献での事例があるグルコースの添加を開始し,窒素除去率や細菌叢などへの影響に関して一定の知見が得られた。しかし一方で,新MBRでは,立ち上げ時より,槽内液の流出などのトラブルに見舞われ,立ち上げに行き詰った。 以上から,昨年度は新MBRに用いるメンブレン(膜)の形状を変更して立ち上げを図り,一方の旧MBRについてもさらなる有機物の添加を検討することとしたが,その矢先にCovid-19の影響により,新旧MBRともに維持が困難になり,再び,窒素除去能が不安定になった。残念ながらその後も,復調が見え始めた時期に限ってCovid-19やリアクタトラブルなどで一槽型部分亜硝酸化-Anammox反応自体も安定維持できない状況が続いたまま現在に至っている。このように,SNADとしての研究成果は乏しいが,MBRに用いるメンブレンの種類に関する知見やMBRを用いる一槽型処理,さらに逐次回分式リアクタ(SBR)による一槽型処理に関する知見を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
当初より継続運転している旧MBRについては,昨年度中ごろより,窒素除去率が安定したため,有機物の添加を開始し,300 mg/Lのグルコースを添加した場合の影響までを明らかにできた。しかしながら,やはりCovid-19の影響によってリアクタの維持が困難になり,残念ながらそれ以降の検討が行えていない。また,この旧MBRについても窒素除去が不安定になるなどの状況に陥ることが多くなっている。 以上を踏まえ,本年度は,最終年度ではあるものの,リアクタを再度刷新して,実験を進める予定である。MBRについては,典型的なMBRの形式にこだわらず,メンブレン(膜)によって固液分離するという原則のみを維持したリアクタを用意し,窒素除去の安定化を優先して実験を進め,実質的な知見を得たい。
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