研究課題/領域番号 |
18H01575
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研究機関 | 国立保健医療科学院 |
研究代表者 |
島崎 大 国立保健医療科学院, 生活環境研究部, 上席主任研究官 (60322046)
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研究分担者 |
春日 郁朗 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (20431794)
秋葉 道宏 国立保健医療科学院, 生活環境研究部, 部長 (00159336)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | エンドトキシン / 浄水処理 / 生物活性炭 / 微生物群集構造 |
研究実績の概要 |
エンドトキシン(ET)は、環境中に広く常在するグラム陰性菌の細菌外膜に存在し水道水の原水および浄水から検出される。血液を介して体内に入ると炎症やショックなどの症状を起こすことが知られている。ET活性は、浄水処理のうち高度浄水処理である、オゾン処理及び粒状活性炭ろ過を経た後に、前段の工程水と比較して増加する事が報告されており,活性炭に棲息する細菌による寄与が強く示唆されている。本年度は、国内の1浄水場におけるET活性の挙動調査と粒状活性炭から単離した細菌についてのET産生細菌調査を各月行った。 2018年7月~12月に採取した粒状活性炭および活性炭逆洗水から従属栄養細菌105株が単離された。各細菌の全菌数あたりの総ET活性値は、9.5×10^-9~4.6×10^-2 EU/cellsであり、ET産生能力の違いは菌種によって極めて大きかった。比較的ET生成能力が高い単離菌90株を対象として16S rRNA遺伝子をPCR増幅、塩基配列を決定、Blast相同性検索を行ったところ13属および1綱に同定され、その内訳は、Acidovorax、Aquabacterium、Arenimonas、Bradyrhizobium、Chromobacterium、 Chryseobacterium、Herbaspirillum、Herminiimonas、Pelomonas、Piscinibacter、Polaromonas、Roseateles、Rugamonas 及び Burkholderiales(綱)であった。最もET産生能力が高い菌種は、2018年10月に粒状活性炭から単離されたPelomonas属であった。一方、ET高産生細菌群が生物活性炭の微生物群集全体に占める割合はわずかであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画どおり、調査対象とする浄水場を選定、調整し、毎月ベースで生物活性炭試料および逆洗水を含む工程水試料を採取した。活性炭および逆洗水中に存在する細菌を単離し、各細菌のエンドトキシン(ET)生成能力を評価する手法を確立した。各単離菌の遺伝子を解析し、ET産生性が高い細菌群を各月ごとに抽出した。さらに、次世代シーケンシングを用いた群集構造解析により、ET高産生細菌群が生物活性炭の微生物群集全体に占める割合を評価できた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に調査対象とした活性炭ろ過槽よりも使用年数が浅い活性炭ろ過槽や、原水が異なる他の浄水場を対象として調査を継続し、検出される細菌種やエンドトキシン生成能力について比較を行う。また、浄水場の処理工程および給水区域内の医療機関を対象として採水調査を行い、ET高産生細菌およびET活性値の挙動調査を行う計画である。
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