研究実績の概要 |
エンドトキシン(ET)は、環境中に広く常在するグラム陰性菌の細菌外膜に存在し水道水の原水および浄水から検出される。浄水場の高度処理のうち、生物活性炭に棲息する細菌による寄与が強く示唆されている。本年度は、昨年度に引き続き国内の複数の実浄水場において粒状活性炭から細菌を単離、同定すると共に、各細菌の増殖に伴うET産生能力ならびにET産生特性の評価を行った。
2018年7月~2019年5月に浄水場Aで採取した粒状活性炭および活性炭逆洗水から従属栄養細菌187株が単離された。各細菌の全菌数あたりの総ET活性値は、3.1×10^-8~4.6×10^-2 EU/cellsであり、ET産生能力の違いは菌種によって極めて大きかった。相対的に高いET 産生能力を有する細菌はAquabacterium, Arenimonas, Herbaspirillum, Pelomonas,Piscinibacter, Roseateles 属の近縁種であった。また、Chromobacterium, Chryseobacterium, Polaromonas 属等は、細菌あたりET 産生能力は低いものの増殖能力が高かったことでET 活性値が増大したため、このような細菌もET産生の寄与が大きいと推察された。水源が異なる浄水場Bにおいては、浄水場Aと共通する菌種、異なる菌種が同定され、微生物群集構造は大きく異なっていた。
各単離菌をR2A 液体培地で振盪培養したところ、いずれも対数増殖期では全菌数の増加に伴いET 活性値も指数的に増加した。多くの場合、定常期以降も培養液中のET活性値は増加し続けており、細菌が死滅した後の細胞外膜の溶解等に由来してETが増大し続けると考えられた。加えて、滅菌水道水で振盪培養した場合、大半の細菌は全菌数およびET活性値とも増加しなかったが、一部は全菌数およびET活性値が増大した。
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