研究実績の概要 |
エンドトキシン(ET)は、環境中に広く常在するグラム陰性菌の細菌外膜に存在し水道水の原水および浄水から検出される。浄水場の高度処理のうち、生物活性炭に棲息する細菌による寄与が強く示唆されている。最終年度は、2018年7月~12月において国内の実浄水場Aの粒状活性炭(GAC)から単離、各細菌の増殖に伴うET産生能力ならびにET産生特性の評価を行った。 浄水場AのGACおよびGAC逆洗水から単離された細菌90株より、13属(Acidovorax,Aquabacterium, Arenimonas, Bradyrhizobium,Chromobacterium, Chryseobacterium, Herbaspirillum, Herminiimonas,Pelomonas, Piscinibacter,Polaromonas, Roseateles, Rugamonas)の細菌種が同定された。各細菌を対象に、R2A液体培地中で7日間の振盪培養を行い、対数増殖期から定常期に至る培養液中のET活性値ならびに細菌数を測定した。 最もET産生能が大きい菌種は、2018年10月に活性炭から単離されたPelomonas属の細菌株であり、4.6×10^-2 EU/mLであった。他に、Aquabacterium属、Arenimonas属は細胞あたりの総ET活性値が相対的に高く、単離株によってET産生能の違いが極めて大きいことが確認された。 一方、Acidovorax属、Chromobacterium属、Chryseobacterium属は定常期の細菌密度が大きく(>1.0×10^8 cells/mL)、他の単離株よりも高い増殖能力を有していた。 以上のことから、粒状活性炭ろ過後におけるET活性値の増大は、ET産生能が高い細菌種や、増殖能が高い細菌種に起因することが推察された。
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