研究課題
本研究では、様々な廃水処理プロセスに生息する機能未知微生物群の菌叢や機能遺伝子といったバイオデータと、水質や運転データ等を活用することで廃水処理の制御因子を発見することを目指している。今年度は、食品系工業廃水を模擬した人工廃水を供給するラボスケールの嫌気性上昇流汚泥床リアクターから採取した汚泥を対象としたショットガンメタゲノムデータから、リアクター内で優占する24種の微生物由来のドラフトゲノムを回収し、それらの優占微生物群が有する代謝機能を解析した。その結果、Synergistota門やBacteroidota門に属する微生物が廃水に含まれる様々なアミノ酸の主たる分解者であることが明らかとなった。特に、Bacteroidota門に属する未培養微生物群クレードに属する微生物のドラフトゲノムからは、好気性細菌が有するチロシン分解酵素群に類縁の酵素遺伝子が見出され、リアクター内部の極微量な酸素を利用しながら廃水中のチロシンを分解していることが示唆された。また、アミノ酸の分解から生じる揮発性脂肪酸のメタンへの分解は、Syntrophomonadaceae科やPelotomaculaceae科に属する嫌気性細菌と、Methanobacterium属といったメタン生成菌との協業によりなされていることが示された。さらに、Solidesulfovibrio属に近縁の硫酸還元菌のドラフトゲノムからは窒素固定関連酵素が見出され、リアクター内で水素やアンモニアを供給することで他の嫌気性微生物群の生育や活性促進に寄与していることが示唆された。今後、オミクス解析から見出された廃水処理における鍵代謝機能情報と、廃水の水質や運転パラメータとの相関分析や機械学習といったデータサイエンス解析を行うことで、廃水処理プロセスにおける最適な運転条件を見出すためのデータ処理スキームを確立することを目指す。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Microbes and Environments
巻: 36 ページ: n/a~n/a
10.1264/jsme2.ME21045