研究課題/領域番号 |
18H01586
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西山 峰広 京都大学, 工学研究科, 教授 (50183900)
|
研究分担者 |
坂下 雅信 国土技術政策総合研究所, 建築研究部, 主任研究官 (50456802)
谷 昌典 京都大学, 工学研究科, 准教授 (50533973)
杉本 訓祥 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 准教授 (60758233)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 鉄筋コンクリート / 耐震壁 / せん断 / 多軸載荷 / 軸力 |
研究実績の概要 |
変動軸力を含む様々な軸力条件が,水平二方向載荷を含む水平方向変形時の鉄筋コンクリート造耐震壁の構造性能に及ぼす影響について検討を行うことを目的として,有限要素解析を用いてパラメトリックスタディを行った。一定軸力の大きさが最大耐力および履歴エネルギー吸収に及ぼす影響,および軸力の変動が最大耐力に及ぼす影響に関する知見が新たに得られた。また,面外方向変形が面内方向耐力を低下させるという既往研究による知見が,軸力の大きさおよび軸力変動に関わらず解析においても確認することができた。以下に得られた主な知見を示す。 (1)軸力比0.20未満の一定軸力では,面内方向の曲げ終局耐力計算値(Qmu)とせん断終局耐力計算値を1.4倍した値(1.4 Qsu)のいずれか小さい方の値と水平一方向載荷時の面内方向最大耐力が概ね一致した。 (2)軸力比0.20以上の一定軸力では,圧縮軸力が増加しても最大耐力が頭打ちまたは減少した。また,最大耐力時層間変形角が小さくなった。 (3)いずれの一定軸力ケースにおいても,面外変形倍率の増加と変形量の増加に伴い,面内方向の等価粘性減衰定数は増加した。 (4)変動軸力下で引張軸力を経験した場合,引張軸力の大きさに応じて面内方向耐力が減少した。 (5)軸力比0.20での一定軸力の場合を除き,変動軸力を含めたすべての軸力条件において,面外方向変位が大きい解析ケースの方が面内方向最大耐力は小さくなる傾向が確認された。 さらには,2015年度にE-ディフェンスで行った6層鉄筋コンクリート造建物震動台実験において破壊した1階耐震壁に作用したであろう軸力,せん断力,曲げモーメントを有限要素解析により追跡し,これに基づき,次年度の載荷実験における軸力変動範囲の設定などを行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の研究計画として以下の4点を挙げていた: 1.過去に行われた耐力壁に対する実験結果を分析し,せん断耐力,曲げ耐力,および,すべり耐力の評価を行うとともに,変形能力評価に重要となる変数を抽出し,評価式作成の基礎データを得る。 2.せん断破壊先行型およびすべり破壊型の壁に対して,FEMを適用し,耐力と変形挙動を把握する。また,載荷経路が耐力壁破壊モードに及ぼす影響を解析的に検討する。 3.柱と梁を線材によりモデル化し,壁はマルチスプリングや適切な曲げバネ,せん断バネにより,層あるいは建物全体をモデル化,および,建物全体の動的解析 4.E-ディフェンスにおいて使用した6層建物全体を3次元FEMにより数値解析し,破壊モードなどが実験の状況とは異なるところもあるので,その原因を追及し,さらに精度を高める。その上で,実験における測定からは得られないデータ,例えば,壁や柱の破壊モードに大きく影響する軸力を解析的に得て,部材の破壊モード判定に利用する。 以上のような研究成果に基づき,平成31年度に行う耐力壁試験体の設計を行う。 上記のような計画に対して,3のみはまだ検討中であるが,その他の項目はすべて完了し,現在平成31年度に行う耐力壁試験体載荷実験の試験体設計がほぼ完了した。試験体製作が5月中には始まるとともに,載荷装置も並行して検討している。 以上のような進捗状況から,おおむね順調に進捗していると判断している。
|
今後の研究の推進方策 |
耐力壁試験体に対する3次元載荷を行い,面外方向載荷と軸力が,面内方向での破壊モード,耐力や変形性能に与える影響を把握する。軸力については,圧縮一定軸力(長期に相当する軸力と地震時に起こり得る高軸力),圧縮と引張間での変動軸力を設定する。破壊モードにはせん断破壊,曲げ破壊,すべり破壊が考えられるが,本載荷実験では,最も一般的であるせん断破壊型を選択し,長期軸力下で地震時水平力を受けた際に,せん断破壊するように試験体設計を行う。 数値解析では,有限要素解析と線材置換の解析とを行う。解析変数としては,外力の設定,すなわち,軸力の大きさと変動,面外変形の大きさ,載荷経路などと,構造部材側の設定,すなわち,曲げとせん断強度の比率,壁筋量などとする。 実験結果と数値解析による検討に基づき,軸力変動と面外方向への変形を考慮した耐震壁の破壊モード,耐力と変形性能評価法について検討する。また,二方向載荷の影響を,直交二方向に対して独立に検討を行っている現行の設計法にどのように組み入れていくかも検討する。
|