研究課題/領域番号 |
18H01590
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小山 智幸 九州大学, 人間環境学研究院, 准教授 (50215430)
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研究分担者 |
陶山 裕樹 北九州市立大学, 国際環境工学部, 准教授 (20507876)
伊藤 是清 東海大学, 九州教養教育センター, 教授 (50380663)
湯淺 昇 日本大学, 生産工学部, 教授 (00230607)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 非反応性副産粉体 / コンクリート / 強度向上理論 / 空隙構造 |
研究実績の概要 |
本研究課題は,フライアッシュ(石炭灰),砕石粉,各種非反応性スラグ,あるいは焼却灰など,世界各地で発生量が増大している種々の副産粉体を,コンクリートの強度を向上させながら大量に有効利用するための強度理論を確立することを目的とする。 平成30年度は,フライアッシュや石灰石粉などの粉体を用いた種々の調合のコンクリートに関して,細孔構造と圧縮ならびに引張強度や剛性との関係について既往の結果も考慮しながら検討を行った。検討の結果,結合材であるセメントの量を一定とした条件で粉体量を増大させてもコンクリート硬化体内部の空隙の総量は変化しないが,粉体量の増加とともに粗大な空隙が減少して圧縮強度が向上すること,一方で引張強度やヤング係数は変化しないことを確認した。 一般に強度は内在する欠陥に起因してポテンシャルの値よりもかなり小さくなっているが,欠陥(コンクリートの場合硬化体中の空隙)の量が少なくなると強度は増大すること,その場合ある一定以下のサイズの空隙は強度に悪影響を及ぼさないこと,一方,通常の状態でポテンシャルの性能を発揮しているヤング係数は粗大な空隙が減少してもそれ以上向上しないこと,また,セメントと異なり水和反応を生じない非反応性の粉体粒子どうしの付着は粉体量が増えても向上しないため引張強度は増大しないものと考察した。 なお,セメント量を一定として粉体量を大きくしていった場合,粉体量がある量を超えると強度が急激に増大することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は,フライアッシュや石灰石粉などの粉体を用いた種々の調合のコンクリートに関して,細孔構造と圧縮ならびに引張強度や剛性との関係について既往の結果も考慮しながら検討を行った結果,結合材の量を一定として粉体量を増大させてもコンクリート内の総空隙量は変化しないが,粗大な空隙が減少して圧縮強度が向上すること,引張強度やヤング係数は変化しないことを確認し,この原因を示した。一方,粉体量がある量を超えると強度が急激に増大するメカニズム,および一定サイズ以下の空隙が強度に影響しない理由に関してはさらに検討を要する。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続きは下記の役割分担で、空隙構造に及ぼす粉体のメカニズム(硬化後の空隙サイズ、形状、およびそれを作り出す混練時の粉体条件など)に関する検討を行う。 ・副産粉体を用いて種々の粒度構成(粒度分布,平均径,微小粒子や粗大粒子の割合など,およびこれらの結果生じる粉体としての空げき率や凝集性状)、および種々の調合(副産粉体とセメントの割合,粉体水比,粉体流体比など)のコンクリート試験体を作成し、その空隙構造と強度の関係について下記の検討による成果を取り入れながら分析する。 ・試験体の作成と強度試験、空隙構造の計測(水銀圧入式ポロシメータによる細孔径分布、電子顕微鏡X線CT法による画像解析)を行う。分析に際し,強度に及ぼす空隙プロパティ(サイズおよびその分布,形状,独立性/連続性など)の検討を行う。 ・上記空隙構成を変化させて最適な状況を実現するための粉体条件のシミュレーションを行うためのプログラミングを継続して行う。 ・副産粉体を混合したコンクリートの空隙構造形成過程について,副産粉体がほとんど水硬性を示さない場合について,セメントの水和反応進行に伴う空隙構造形成過程の分析を行う。
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